──なぜラップという表現を選んだのですか?
バンドで活動しているうちに「自分が本当は何をしたいのか」が分からなくなっていって。とにかく気持ちを言葉にしたくて、ドラムを叩きながらラップをするようになりました。
当時のリスナーにとっては衝動的だったかもしれませんが、私にとってラップは“セルフカウンセリング”だったんだと思います。
──あっこゴリラとしては、女性の無駄毛をテーマにした「エビバディBO」(2018年)や年齢をテーマにした「グランマ」(同)といった楽曲を発表するなど、固定概念に疑問を投げかけるような楽曲も発表しています。こうしたメッセージを発信しようと考えたきっかけは?
バンド時代から思うところはあったんです。例えば、「あなたは才能がないから、結婚して子どもを産んだ方が幸せになれる」と言われたことがありました。自分の人生を否定されたようで悔しかったし、「女性の幸せ=結婚して出産すること」という固定観念にも強い違和感を抱きました。
ヒップホップの世界に入ってもマスキュリズムは蔓延していて、同じように違和感を抱く場面がありました。そこで「自分が感じていて、でもまだ表現しきれていないことを楽曲にしよう」と決意しました。
その結果生まれたのが「ウルトラジェンダー×永原真夏」(2017年)。女性のみのMCバトル「CINDERELLA MCBATTLE」での優勝後という注目の集まるタイミングで発表したこともあり、ターニングポイントになったと思います。
ミレニアル世代のひとつのサンプル
──現在、リスナーからはどういう役割が求められていると思いますか。自分自身の心を内省する役割ですかね。
例えば、自分自身のジェンダーを見つめ直す作業って、日常生活と並行してやっていくのは大変じゃないですか。だからこそ、私がリスナーの皆さんの声を代弁して音楽にすることで、考えるきっかけを与えることができたらと思っています。私はミレニアル世代のひとつのサンプルとして捉えていただければ、とも思っているんです。
ただ、アーティストは影響力があるからこそ、発言にはリスクも伴います。リスナーはアーティストの「発言」が好きでファンになるわけでもないですし。なので、自分は誰かの意識を変えるために存在しているわけではないけれど、結果的に意識を変える存在になっているといいなと考えています。