アート

2024.05.22 09:15

パーパスを壁画で浸透。企業から依頼が相次ぐアート集団「OVER ALLs」

田中友梨
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OVER ALLsの赤澤岳人社長

昨今、「パーパス」という言葉はビジネスシーンでは「常識」となりつつある。「パーパス」とは企業の「社会的な存在価値」や「社会的意義」を意味する言葉だ。

「中途採用の増加」「終身雇用の崩壊」「従業員の価値観の多様化」などで、同じ会社のなかであっても、同じ目的意識のもとで仕事に取り組むことが困難となっている。こうした「困難な時代」のなかで、従業員の目指す方向をそろえていくために「パーパス」を設定する企業が増えているのだ。

だが多くの企業で、パーパスは「絵に描いた餅」になっているのではないか。パーパスを定めた企業の従業員で、自社のパーパスをすぐに暗唱できる者がどれほどいるだろうか。

ミューラル(壁画)アーティスト集団・OVER ALLs(東京・港区)には、そうした「パーパスをつくったけれど、浸透したという手応えを感じられない」企業から依頼が相次いでいる。

OVER ALLsとは何か?

OVER ALLsは、様々な壁画を制作する集団だ。例えば、北海道日本ハムファイターズの新本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」に、大谷翔平選手やダルビッシュ有選手など、北海道日本ハムファイターズの歴史を築いてきた選手たちの壁画を描いた。また、東京電力福島第一原発の事故で全町避難を強いられた福島県双葉町でも壁画を制作した。

同社を特集したメディアは『情熱大陸』(毎日放送)をはじめ、『news zero』『news every』(いずれも日本テレビ)、『サンデージャポン』(TBS)、『WBS』(テレビ東京)など、挙げればキリがないほどだ。

だが、これらの特集はどれも「大谷選手」や「被災地支援」に焦点をあてたものだった。実は同社は企業のパーパスを表現した壁画も数多く制作している。クライアントにはみずほフィナンシャルグループなど日本を代表する大企業も少なくない。

そこで今回は「パーパスの浸透に悩む企業がなぜOVER ALLsに壁画を依頼するのか」「OVER ALLsはどのようにして、パーパスを壁画として描いていくのか」、さらに「なぜ、これほど多くのメディアがOVERALLsを取材するのか」に迫っていきたい。

パーパスがアートになるまで

「コロナ禍が落ち着きつつあった2年前から依頼が一気に増えてきました。相談を受けて感じるのは、コロナ禍を期に多くの会社が自分たちの有り様を考えるようになったということです」
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文=下矢一良

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