欧州

2024.05.21 09:30

ウクライナ、単一弾頭の新型ATACMSも入手か クリミアの掃海艇撃沈が示唆

ロシア海軍の掃海艇「コブロベツ」。2017年6月、ウクライナ南部クリミア・セバストポリ港(volkova natalia / Shutterstock.com)

コブロベツに対する攻撃に使われたのが実際にATACMSだったとすれば、2つのことが考えられる。
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1. ウクライナは子弾搭載型のM39とM-39A1のほかに、それぞれ210kgの単一弾頭を搭載するM48型(射程270km)やM57型(射程300km)のATACMSも密かに受け取っていた

2. M48やM57は一般に想定されている以上に命中精度が高い

もしこの通りなら、意味するところは重大だ。まず、M39A1、M48、M57の射程圏内であるセバストポリに停泊する黒海艦隊の生き残っている軍艦も、非常に大きな危険にさらされていることになる。英スコットランドのセントアンドルーズ大学のフィリップス・オブライエン教授(戦略研究)は「ATACMSでセバストポリのロシアの軍艦も除去できるのなら、この基地はロシアにとってほとんど使い物にならなくなるのではないか」と述べている
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セバストポリや近郊のベルベク飛行場を守っているS-400長距離地対地ミサイルシステムはATACMSの迎撃に失敗しており、このシステム自体もよく被害を受けている。ポルトガルの軍事コンサルタント、ヌーノ・フェリックスは「ロシア軍にはATACMSに対処する能力がほとんどない」と指摘する

単一弾頭型で命中精度の高いATACMSはさらに、ロシア南部とクリミアをつなぐケルチ橋にとっても深刻な脅威になりそうだ。ノルウェーのオスロ大学で核兵器問題に関するプロジェクトに携わるファビアン・ホフマン研究員は、M48やM57によってこれほどの精度で攻撃できるのなら、ケルチ橋も「実行可能な攻撃目標」になるだろうと言及している

たしかに、現在はロシア占領下のウクライナ南部を通ってクリミアに延びる鉄道が開通しており、ロシア軍のクリミアへの補給路はケルチ橋経由のものだけではない。だが、ウクライナ側はこの鉄道路線を遮断し、ケルチ橋も落とせば、ロシア軍のクリミア駐留部隊への補給を断つことができる。

フェリックスはATACMSについて「この戦争で鍵を握る土地、クリミアを防御できない場所にするという重大な変化をもたらす」とも書いている。掃海艇の撃沈はウクライナ側にとって、もはやおまけ程度のものかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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