ウクライナ軍参謀本部やウクライナ海軍によると、18日から19日にかけての夜、前線から南へ240kmほど離れたロシア占領下クリミアのセバストポリ港を攻撃し、黒海艦隊の掃海艇「コブロベツ」を撃沈した。通信アプリ「テレグラム」のロシア側の複数のチャンネルもこの損失を認めている。
「ロシア黒海艦隊にとって再び悪い日になった」。ウクライナ国防省はそう皮肉っている。
Another bad day for the russian Black Sea Fleet.
— Defense of Ukraine (@DefenceU) May 19, 2024
Overnight, Ukrainian defenders destroyed a russian minesweeper Project 266M "Kovrovets".
Great job, warriors! pic.twitter.com/ol4reKtuN6
むしろ注目すべきは、ウクライナ側がコブロベツを撃沈した方法である。ロシア側の情報源によれば、今回の攻撃はATACMS弾道ミサイル2発によるものだった。
発射重量1500kg前後の地上発射型ミサイルであるATACMSは、地上の目標に対する攻撃に使われるのが普通だ。通常、艦艇に対する攻撃に使われないのには理由がある。基本的に慣性誘導されるATACMSの命中精度は、多くの情報源によると目標から約9m以内とされ、大型弾頭1発で確実に艦艇を沈めるには不十分なのだ。
ウクライナはこれまでに、米国からATACMSを少なくとも2回にわたって合計で120発以上受け取っている。それには射程165kmのM39型のほか、射程300kmのM-39A1型が含まれていた。両タイプは空中で炸裂して擲弾(てきだん)サイズの子弾を数百個〜1000個近くばらまくので、命中精度の低さはある程度相殺される。
ただ、M39やM-39A1で艦艇を攻撃した場合、飛散する子弾は艦艇の上面に損害を与えることはできても、艦艇を沈めることはおそらく無理だろう。沈めるには艦体(ハル)を破壊する必要があるからだ。