ネガティブなニュースやソーシャルメディアのコンテンツをチェックすることがやめられなくなり、半ば依存的になってしまう「ドゥームスクローリング(Doomscrolling)」が、働き手の生産性を奪っている。そうした中、ネットを使う際の集中力を取り戻そうとする動きの先頭に立っているのが、Z世代の若者たちだ。
TikTok、インスタグラム、Xなどのソーシャルメディアプラットフォームは、思わずやみつきになるようなフィードバック・ループを作り出し、私たち人間が自然に持つ「ネガティビティ・バイアス(ポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に影響を受けること)」に乗じるように設計されている。その結果として生じるのが、ドゥームスクローリングによるその場限りの興奮、社会が分断されているという意識の高まり、生産性の低下、時間の浪費を招く注意力散漫だ。
ソーシャルメディアの世界には、皮肉を込めた発言や恐怖、「FOMO(取り残されることへの不安)」が溢れており、いわば「怒りの経済」と言うべき体系を形作っている。だが、こうした状態への対抗策として、Z世代が行動を起こしつつある。彼らは、ソーシャルメディアに支配された世界に対して、より理性的なアプローチを取る動きの先頭に立っているのだ。
実際、ドゥームスクローリングをやめることが不安の連鎖を断ち切り、ネガティブな物事に動揺しない強い心を育むために役立つことが判明している。
ドゥームスクローリングが奪う生産性
Z世代と、その下のアルファ世代を対象に英国で実施された調査では、対象者の50%近くが「インターネットがない世界で育ちたかった」と回答した。若年層に対するソーシャルメディア禁止令を歓迎する者も、半数に達した。
「The Offline Club(オフライン・クラブ)」というインスタグラムのアカウントは、50万人を超えるフォロワーを獲得している。ある意味皮肉なのは、「ソーシャルメディア断ち」を勧める「クラブ」が存在している場所がソーシャルメディアだということだ。
このクラブは、メンバーに対して「スマートフォンの画面を見つめている時間を、リアルで過ごす時間に置き換えよう」というスローガンを掲げ、「(スマートフォンの)電源を切り、リアルで人とつながり、リラックスして楽しもう」と呼びかけている。ドゥームスクローリングしている時に、こうした「リラックスして楽しい」という感情を覚えるだろうか?(みなさんと同様に、私もそう感じることはない)。
あなたは、ほんの一瞬だけ「チェックしたい」という欲求を感じ、悪いニュースをもたらす通知をスクロールして、退屈をしばし紛らわそうとしたことはあるだろうか?(私はある)。そして、画面を見始めてから2時間が経過し、「おしゃべりする赤ちゃん」ミームを6つ見たあとも、インターネットから離れられないでいる自分に気づく──そして、ドゥームスクローリングの落とし穴にはまって、1日の貴重な数時間を奪われたことに気づいたことがあるのではないだろうか?