医療格差を体感したからこその起業
AI医療としての圧倒的な地位を築きつつあるアイリスだが、創業者である沖山氏の原動力となっているのは、限界地域で医師をする際に感じた医療格差と重圧であると語る。沖山:「私は研修医として東京都渋谷区 の赤十字病院 で働き始めたのですが、その後、沖縄の離島、石垣島や波照間島、そして小笠原諸島の日本の最東端の南鳥島で働いてきました。南鳥島は小さな島で、住人は100人ほど。そこの島の唯一の医師として勤務していた時に、医療格差を痛感しました。
医療格差、言葉にしてしまうとどこかで聞いた話になってしまうのがもどかしいのですが、私の身に応えた格差というのは「その島で自分が診断できない病気は、島の100人にとっては見逃される病気になる」ということ。自分が治療できない病気は無いものとなってしまう。もちろん重症な方は東京の病院に船・飛行機により行っていただくのですが、病気は緊急性あるものもありますし、そもそも見つけられなかったらその判断すらできないわけで。文字通り自分の限界がこの島民100人の医療の限界という感覚がありました。非常に重いです。潰されてしまう人はこれでバーンアウトしてしまう人も出てきてしまう重圧です。
しかも、私と島民100名、だけではなく日本全国に同じ問題がたくさんあることを考えた時に、自分のキャリアを見直すこととなりました。厚労省に行けば格差が解決できるのではないか、と考え厚労省の説明会にも行き、同時に究極の格差地域における実践者である「国境なき医師団」の説明会にもいきました。そして、起業も視野に入れて動いてみました。他の方からすると厚労省・国境なき医師団・起業で迷うのには一貫性がなく見えるかもしれません が、私からするといずれも共通の目的に到達するための手段であり、選択肢だったのです。
色々と考える機会があり、最終的には起業の道を選びました。離島にいるお医者さんが医師+AIという選択肢を持つことにより、できることが広がると考えました。AIだけではなく、新しいテクノロジー×医療をスケーラブルにし、かつ、そこから生まれてくるデータを次のAIの成長・発展に繋げていくサイクルを生んでいくことをミッションとすることが自分が離島で感じた格差を解消するための一手段と考えて、です。」