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2024.03.02 14:15

アート×テクノロジー×非営利団体 NY在住キュレーターが導く日本のポテンシャル

Leonard Zhukovsky / Shutterstock.com

Leonard Zhukovsky / Shutterstock.com

我々が最初に出会ったのは中目黒のピザ屋だ。友人であるデジタルカルチャー研究者ベノア・パロ(Benoit Palop)が連れてきてくれたのが今回の取材相手、斯波雅子(しば まさこ)氏だ。NY在住20年以上の彼女はオークションハウス「サザビーズ」でアートとコレクター間のビジネスに携わったのち、ジョン・D・ロックフェラー3世が立ち上げた日・米・アジア間の文化交流を中心とした非営利団体(ジャパン・ソサエティー、アジア・ソサエティー、アジアン・カルチュラル・カウンシル)でのアートマネージメント、GALAディナーなどを用いたファンドレイジングなどに携わった。

2019年にはアジアン・カルチュラル・カウンシル日本財団の初代事務局長も務めている。コロナによるパンデミックを経て、それまでフィジカルな人材/アート交流を軸にしていた動きができなくなったことや、ブロックチェーンやAIの台頭にテクノロジーの可能性を発見したことにより独立・起業し、アート&テクノロジーの可能性を追求するようになったという。私もフランス発のArt Thinking Improbableを日本で展開している中で様々な「アート&テクノロジー」に触れてきているが、いよいよ本丸に出会えた! という喜びから今回の取材に結びついた。

斯波雅子氏

斯波雅子氏

NYという世界最大級のアート発信地にいる彼女は「web3アート&マガジン会社ONBD」、「ブルックリン実験アート財団(BEAF)」などを積極的に立ち上げている。「ONBD」ではキュレーションを中心にweb2のアーティストをweb3にオンボーディング(教育)することを行ないつつ、クリエイター向けプラットフォームのベータ版をローンチしたそうだ。

アーティストにweb3/分散型/ブロックチェーンを元にしたソーシャルウェルネス、チャリティーの仕組みを教えることにより、新しいタイプの作品制作ができるばかりか、アーティスト自らが社会、人とのつながりや帰属意識を育み資金を得る可能性も高めることが可能になる。また「ブルックリン実験アート財団」では、日本のアーティストをレジデンシー作家としてNYに招きポテンシャルを最大限引き出し、日本および世界で活躍できるアーティストに育てる活動を始めたばかりだ。

斯波雅子(以下、斯波):「アーティストの仕事は人が思いもつかない視点を提供すること、徹底的にユニークであるべきなんです。AI時代において、何よりも大事なのはアーティストの思考だと思います。私としてはなるべく世の中とアーティストとの接点を多く作りたいと考えており、そのために非営利団体やテクノロジーを活用しています。

例えば直近立ち上げた「ブルックリン実験アート財団」では前澤友作さんが会長兼創設者でいらっしゃる「現代芸術振興財団」と組み、日本のアーティスト SEN TAKAHASHI(髙橋銑)を3カ月間NYにレジデンシー作家として招聘します。SEN TAKAHASHIはブロンズ作品の修復師でもあり、ドガ等の巨匠がどのように意図して作品を作ったのか、どのような保管をされてきたのかを研究しそれを自分の作品制作に反映させます。つまり、作品が作られた当時とその後の運命を全て把握できる存在がSEN TAKAHASHI、非常にユニークなバックグラウンドの作家です。

私たちがNYでSEN TAKAHASHIに行うことは彼の専門外の「今までにない接点を増やす」ことです。3月1日から3カ月間滞在してもらう予定なのですが、まだプログラムは全部固めていません。SEN TAKAHASHIの反応を見ながら、ブロンズ以外の素材を使ったアーティストや、研究者、美術館等NYでしか会えない業界の第一人者達にあってもらう事で多角的な視点をえてもらおうとしております。3カ月のプログラムが完了した後に、SEN TAKAHASHIがブロンズを使い続けるのか、新たなマテリアルとの出会いにより新たな作品の幅を広げるのか? 今から楽しみです。

私が行うレジデンシープログラムで大切にしているのは参加するアーティストがスポンジのように新しいことを吸収する力があり、それを基に変化する勇気があるかどうかです。SEN TAKAHASHIを選んだ理由もそこにあります。大学卒業して5年から10年というのがアーティストとしての見極めどころなのですが、彼はコミュニケーションをとることや新しいことにオープンであるのがインタビューを通じて感じられたので、今回第一号のレジデンシー作家として来てもらうことになりました。」


建設中の「ブルックリン実験アート財団(BEAF)」近景

建設中の「ブルックリン実験アート財団(BEAF)」近景

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