歴代の米国大統領はもうかれこれ数十年も、「月に再び人類を送り込み、さらに火星へ向かう」というお題目を唱え続けている。その一方で、欧州宇宙機関(ESA)や米航空宇宙局(NASA)から、人類を火星に送り込む具体的なスケジュールは示されていない。
4月8日に米国で観測された皆既日食は大きな話題となったものの、一般の人々の天文学や宇宙に対する関心は、幅は広いが非常に浅い傾向がある。
宇宙開発の推進派は、太陽系やさらにその先への探索に関して、時に楽観的になりすぎる傾向がある。彼らが思っているほど現実はうまくいかない理由を、5つのポイントに絞って説明していこう。
理由その1:誰もが宇宙開発に情熱を持っているわけではない
大半の米国民は、自身が税金として納めたお金に関しては、投じられた金額に見合う、何らかの見返りを求めている。以前NASAで主任歴史学者(chief historian)を務めていたロジャー・ローニアスは、先ごろ刊行した著書『From NACA to NASA to Now』の中で、こう記している。「今世紀中に宇宙に飛び出したいと願う者にとって、根本的なレベルで最も厳しい障壁はこれ(政治的意思)だ。技術的な問題もかなり大きな障壁だが、(政治的意思は)それを上回っている」
では、にわかに活気づいている商業的宇宙開発についてはどうだろうか?
イーロン・マスクとスペースXが、衛星打ち上げビジネスに革命的な変化をもたらしたのは事実だ。スペースXが開発した再利用可能なロケット「ファルコン9」は現在、全世界の打ち上げの実に半分以上を担っている。米国宇宙協会の機関誌『アド・アストラ』(「星の彼方へ」を意味するラテン語)の編集長を務める著述家のロッド・パイルが、筆者宛てのメールでそう指摘している。