宇宙

2024.04.23

宇宙開発が「思っているほど進んでいない」現実的な5つの理由

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月日が矢のように過ぎ去り、宇宙開発の目標がまたしても達成されないままに視界から消えていく現状では、低軌道(地上から500~2000km程度の高度を周回する軌道)の範囲を超えた有人ミッションについての話を聞いただけで、一般の人たちが疑わしく思うのも無理はない。

歴代の米国大統領はもうかれこれ数十年も、「月に再び人類を送り込み、さらに火星へ向かう」というお題目を唱え続けている。その一方で、欧州宇宙機関(ESA)や米航空宇宙局(NASA)から、人類を火星に送り込む具体的なスケジュールは示されていない。

4月8日に米国で観測された皆既日食は大きな話題となったものの、一般の人々の天文学や宇宙に対する関心は、幅は広いが非常に浅い傾向がある。

宇宙開発の推進派は、太陽系やさらにその先への探索に関して、時に楽観的になりすぎる傾向がある。彼らが思っているほど現実はうまくいかない理由を、5つのポイントに絞って説明していこう。

理由その1:誰もが宇宙開発に情熱を持っているわけではない

大半の米国民は、自身が税金として納めたお金に関しては、投じられた金額に見合う、何らかの見返りを求めている。以前NASAで主任歴史学者(chief historian)を務めていたロジャー・ローニアスは、先ごろ刊行した著書『From NACA to NASA to Now』の中で、こう記している。

「今世紀中に宇宙に飛び出したいと願う者にとって、根本的なレベルで最も厳しい障壁はこれ(政治的意思)だ。技術的な問題もかなり大きな障壁だが、(政治的意思は)それを上回っている」

では、にわかに活気づいている商業的宇宙開発についてはどうだろうか?

イーロン・マスクとスペースXが、衛星打ち上げビジネスに革命的な変化をもたらしたのは事実だ。スペースXが開発した再利用可能なロケット「ファルコン9」は現在、全世界の打ち上げの実に半分以上を担っている。米国宇宙協会の機関誌『アド・アストラ』(「星の彼方へ」を意味するラテン語)の編集長を務める著述家のロッド・パイルが、筆者宛てのメールでそう指摘している。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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