宇宙

2024.04.23 11:00

宇宙開発が「思っているほど進んでいない」現実的な5つの理由

理由その5:宇宙開発関連技術はまだ初期段階

前述した科学史家のローニアスは、著書でこう記している。(ライト兄弟がノースカロライナ州キティーホークで初めて飛行機を飛行させた1903年を起点として)「66年間で人類が月にたどり着いたのは驚異的な成果だ」と。

では、火星への有人飛行はどうだろうか?

世論調査の結果は一貫しており、火星への有人ミッションを支持する米国人の割合はわずか約40%ほどだと、ローニアスは著書で指摘している。ここまで言えば大きな驚きではないだろうが、同氏は、21世紀後半になるまで、火星に人類がたどり着くことはないのではないかと考えていると綴っている。

パイルも、火星への有人飛行は、今すぐにはとても手の届かない夢だとの考えだ。

火星の環境、そして宇宙空間に長期間滞在することが人体に及ぼす負荷について理解が深まれば深まるほど、火星へのミッションはより費用がかかり、大変な努力を要するものになっていく印象だと、パイルは語る。

宇宙飛行士を火星に運ぶ往復の航路では、何らかの手段で人工的な重力を作り出し、それを活用するのが理にかなっていると、パイルは考えている。しかし同氏によると、人工的な重力を作り出すには多額の費用がかかる上に、完全にこれからの技術だという。

パイルによれば、長期にわたる安全が保障される生命維持や放射線の遮蔽など、他の技術的要素に関しては比較的開発が進んでいる。しかし、1年以上地球に戻ることができない有人ミッションのためにこれらの技術を用いる場合、かなりの技術的進展が必要になるという。

では、火星探査にはどれだけの費用がかかるだろうか?

控えめに見積もって数百億ドル(数兆円)、最高で1兆ドル(約150兆円)の費用が、内容のある、安全な有人火星ミッションにはかかると考えられていると、パイルは語る。

短期的に見ると、有人宇宙飛行は今後も、NASAなど政府機関の職員や、冒険精神に富む大富豪が関わる領域にとどまるだろう。しかし、(英ヴァージン傘下のVirgin Galacticが提供しているような)弾道飛行を使った宇宙旅行であれば、ゆくゆくは、より平均的な収入に近い層の手に届くようになるだろうとパイルは見ている。

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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