アジア各地で開催されるこのアワードだが、この度初の開催地となったのは、韓国・ソウル。カンナムの五つ星ホテル、グランド インターコンチネンタル ソウル パルナスの会場にはシェフや関係者、メディアなど800人以上が詰めかけた。
背景には、K-Popの成功に続き、K-Foodと名付けた、韓国料理を普及推進する韓国政府の積極的な働きかけがあった。招致に関わった韓食振興院のラルフィー・ソン氏は、「1年かけて準備してきたイベント。多くの海外シェフが訪れ、地元のシェフたちとの交流が図れたことで、今後韓国の食がより一層昇華されるはず」と、ここからのさらなる食文化の発展を期待する。
「その土地らしさ」の表現
今回のリストで、日本は昨年よりは1店少ないものの、9店が50位以内にランクインした。今回の結果から読み解けたことの一つは「センス・オブ・プレイス(その土地らしさ)」というべき傾向だろう。今年アジアNo.1となったのは、フォーシーズンズホテル東京 丸の内にあるモダンフレンチ「セザン」。イギリス出身のダニエル・カルバート氏は、日本の食材への敬意を中心に据え、その味を引き出すために、フランスのみならず、中国や日本の技法も応用している。
過去に香港に住んでいたこともある彼は、「無理やり日本料理っぽくや中国料理っぽくするのではなく、香港や日本で暮らすうちに吸収した、その土地の味覚を、西洋料理のフォーマットで表現する。頭で考えてもなかなかしっくりこない。逆に、『この土地らしさ』が自然に生み出された料理を提供している」という。
また、2位に選ばれた、東京の「フロリレージュ」も「東京らしさを考えた末で」日本の野菜を主役に据えた店だ。
トップ2店が東京の店となったことを受けて、日本評議委員長の中村孝則氏は、「コロナ後、円安の影響などもあり、インバウンドの旅行客が多く訪問するようになり、本来あるべき結果が得られたと思います」と語った。