イギリスは19世紀に「世界の工場」となることで世界で最も豊かな国になりました。米国も20世紀に同じように成功しています。しかし、ここ数十年で米国の製造業はずいぶん衰退してしまいました。その結果、社会的・政治的な分断を招き、地政学的にも不安定な状況に陥っています。
こうした背景から、米国に製造業を取り戻す政策は民主党、共和党の両党から強い支持を得ています。2022年に成立したCHIPS法(訳注:米国内の半導体産業振興を目的とした投資を支援する法案)からも、この復興に向けて米国政府が本格的に資金を投入する方針であることがわかります。
同時に、様々な変化とともに米国の製造業復興に必要な条件が整ってきています。例えば機械学習型の新たなロボットシステムにより今後さらに自動化が進めば、これまで製造拠点を他国に移すインセンティブとなっていた人件費の差の縮小につながるでしょう。加えて、SpaceXやTeslaなどの企業のおかげで、「スタートアップのような環境」と「物理的なプロダクトの開発」を両立した国内企業の作り方をよく知っている若い世代のエンジニアたちが輩出されています。
このアプローチがうまくいくことは、私たちが実際に支援している同分野のトップ企業でも見てきました。例えばAstranis(W16)は、第二次世界大戦中に米海軍の軍艦製造に使われていたサンフランシスコ中心部の建物を拠点として、通信衛星を作っています。アメリカのかつての工業中心地であるピッツバーグに拠点を置くGecko Robotics(W16)も、産業用検査ロボットの製造で成功しています。Solugen(W17)もヒューストンの大規模な工場を活用し、産業用化学薬品の製造で活躍しています。
宇宙スタートアップ – Jared Friedman and Dalton Caldwell
ロケットを軌道に到達させるためのコストは急速に低下していて、なんと2006年にSpaceXが初めて打ち上げに成功した時点と比べて10分の1以下にまで下がっています。シードラウンドで調達できる資金だけで、衛星の製造から打ち上げまでできる時代になったのです。
現在、宇宙にどれだけの重さのペイロードが打ち上げられているか考えてみてください。それが1年後や5年後や10年後には、どれほどの規模に膨らんでいるでしょうか。
そしてもし宇宙へのアクセスが、民間航空旅行や海上輸送、トラック輸送などと同じくらい日常的で安価なものになる未来が間近に迫ってきているとしたら、どんな新しいビジネスが生まれるでしょうか。
宇宙ビジネスを立ち上げるというと、あまりにも野心的で難しいと思われがちです。しかし、実はソフトウェア企業を立ち上げるのと比べて必ずしも難しいわけではないのです。実際、YCもAstranisやRelativity Space、Stokeなど多くの宇宙企業に出資してきましたが、その成功率は他業種の投資先と比べて決して低くなく、もしかしたら若干高いくらいかもしれません。
Coralの投資先における該当企業:
・GITAI
・Infostellar
・大熊ダイヤモンドデバイス