ほとんどのエンタープライズ・ソフトウェアは、ユーザー側で多くのカスタム・コードを書く必要があります。そのためOracleやSalesforce、NetSuiteのような大手ベンダーでは、SIerやコンサル、独立系ソフトウェア・ベンダー(ISV)からなる数十億ドル規模のエコシステムをそれぞれ構築していて、クライアントに代わってプロダクトのカスタマイズや外部ソフトウェアとの連携を行っています。
ETLパイプラインや統合、カスタム・ワークフローなど形は様々ですが、こうした「グルーコード」(訳注:glueは糊の意味)はエンタープライズ・ソフトウェアの世界におけるダークマターのような存在です。
YCでもZapier(S12)やFivetran(W13)、Airbyte(W20)をはじめとした投資先がこの分野で成功しています。いずれも企業の一般的なユースケース向けグルーコードの構築を支援するプロダクトを提供しています。
一方で、LLMを活用すれば個々の企業特有の一般的ではないユースケースに対してもカスタムコードを生成できるようになる可能性があります。グルーコードの必要性そのものが完全になくなるということです。YCでは今後、この分野に取り組むスタートアップが増えることを期待しています。
Coralの投資先における該当企業:
・primeNumber
・Anyflow
ジャパン・アドバンテージ(日本ならではの強みで、グローバルに展開)
ロボティクスへの機械学習の応用 – Diana Hu and Jared Friedmanロボティクスはまだ「ChatGPT革命」のような転換点を迎えていませんが、すぐそこまで来ていると私たちは考えています。
YCはおよそ20年にわたりロボティクスに注目してきました。実はYCの創業者の1人であるTrevor Blackwell自身が、史上初の動的にバランスをとる二足歩行ロボットを製作するなど最先端で活躍しているロボット工学者なのです。
SF小説からわかるように、ロボットは発展した未来の象徴として何十年も前から期待されてきました。一方で、従来型のロボットは高価で壊れやすく、管理された状況下でなければ動作しないものだったため、そんな未来の実現は難しいのではないかと考えられてきました。しかしファウンデーションモデル(基盤モデル)の急速な発展により、ようやく人間レベルの知覚や判断力を持つロボットを作ることが可能になってきました。これまで欠けていた要素がようやくそろったのです。
SFの世界では消費者向けの用途が多く取り上げられていますが、実は最もすぐに応用できて、見落とされがちなのがB2B領域におけるロボットの活用です。具体的には、検査用ロボット開発のGecko Robotics(W16)のような産業用ユースケースや、John Deereに買収された自律走行トラクター開発のBear Flag Robotics(W18)のような農場用ユースケースが有望だと考えています。
私たちは、ロボットそのものを作る人たちや、それを支援するソフトウェア・ツールを作る人たちにこれからも投資していきたいと考えています。