起業家

2024.02.14 16:00

創業者は会社の基盤を徹底して作り込むべきだ

縄田 陽介

起業家は、スタートアップの創業期には数え切れないほど多くの課題に直面するものです。プロダクト・マーケット・フィットを見つけることや、最初の一握りの顧客を獲得すること、投資家が自分たちに出資してくれるように説得することなど、何もかもが資金が尽きるまでの時間との戦いのように感じられるかもしれません。

この多忙で混沌とした時期に見落とされがちなのが、会社の初期の基盤づくりに意識的に取り組むという視点です。

実際、私はこれまで100社以上のスタートアップと仕事をする中で、「スピードを求めるあまり、人材やカルチャーを最初から十分に重視してこなかったこと」が多くの起業家にとって落とし穴になるのを見てきました。

ピーター・ティールも著書『ゼロ・トゥ・ワン』の中で、「創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない」という「ティールの法則」について語っています。

間違った共同創業者を選んだり、間違った人材を雇ったりといった初期のミスは、あとから修正するのが難しく、倒産など極端な状況に追い込まれないかぎり変えられないケースが実際に多いのです。

欠陥のある土台の上に偉大な企業を築くことはできないのですから、最初に正しい選択をして基盤を整えることが起業家の責任と言えるでしょう。

会社の基盤を構成する最初の要素は、言うまでもなく起業家自身です。

投資を検討する際、私は創業チームについてよく調べるようにしています。技術的な能力や補完的なスキルセットだけでなく、共同創業者同士の関係性や連携力も重要なポイントです。

そういった意味では、本当は会社を立ち上げる前からお互いによく知っている仲であることが理想的です。

また、自社株をどのように分割するかを慎重に検討することや、誰かが辞めたときの方針を決めて契約に明記しておくことも大切でしょう。

Coral Capitalでは、よくパートナーのKenが投資候補のスタートアップのテクノロジーやビジネスがいかに素晴らしいかを情熱的にプレゼンしてくれるのですが、「キャップテーブル(資本政策表)は?」と聞いたら、案の定調べていないというオチだったりするので、もはや内輪ネタのようになっています。

Kenのようにスタートアップのアイデアそのものに夢中になるタイプに対しては、私のほうから基礎的な部分について徹底的に確認するようにしています。

キャップテーブルについて問うのは、そこにスタートアップの初期の決断や創業者間の関係性、インセンティブなどが反映されているからです。それを見るだけで、その企業を知る上で重要な情報がわかったり、少なくとも今後確認するべき点について知るためのヒントになります。

一方で、どんなにアイデアが素晴らしく見えても、それだけでは判断できません。創業時点の状況や条件はスタートアップによってまったく異なり、会社が成功するどうか、そしてどれほどの規模で成功するかは、創業時のそうした「土台」によって決定づけられるのです。脆弱な土台の上に高層ビルを建てることはできないのと同じです。
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文=James Riney

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