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2023.11.30 14:30

危機下のイノベーション―、紛争に備える日本経済の最前線

縄田 陽介

平穏な時代が続くと、紛争の予兆があっても人はそれを見落としがちですが、こうした油断の危険性は歴史を見れば明らかです。

現在も、発達する嵐のように緊迫感を増す世界情勢を前に、世界の金融市場は不気味なほど落ち着き、現状に危機感を抱いていないかのように見えます。

そして同じようにヨーロッパが第一次世界大戦へと徐々に、いつの間にか突入していったときも、当時の投資家たちにとってそれは青天の霹靂でした。

歴史学者のニーアル・ファーガソンが鋭くに指摘したように、1914年に突如として眼前に立ち現れた戦争の現実は、ギリギリまで平然としていた市場にとって暴力的なほど強烈な目覚めを促すショックとなったのです。

現在に話を戻しましょう。私たちは再び、特にアジア勢力の台頭やその紛争危機を中心に、目がくらむほど激しいショックを受けざるを得ない瞬間に迫っているのではないでしょうか。

日本は全国に張り巡らされた米軍基地に加え、アジア諸国との地理的な近さもあり、台湾をめぐる米中対立に巻き込まれかねない難しい立場にあります。

日本政府もこのような地政学的な情勢変化を敏感に察知した上で、2027年までに防衛予算をGDPの2%まで引き上げる計画を立てるなど、防衛力の強化を進めています。

これは単に慎重な防衛策を講じているというだけの話ではありません。いかなる国家も、ましてや世界の超大国と密接に結びついている国家であればなおさら、戦鼓が遠くで鳴り響く中で傍観者ではいられないという歴史的教訓を踏まえての判断なのでしょう。

日本のスタートアップシーンが急拡大する中、こうした地政学的な風向きはスタートアップにとって課題にもチャンスにもなります。

そして私の同僚のKenが先日公開されたエッセイで概説したように、日本経済の発展と国内スタートアップの活性化は切り離せない関係にあります。

さらに、経済的な貢献だけではなく、紛争リスクが高まる中で日本が「戦略的自立」を目指す上でも、スタートアップの最前線での活躍が期待されます。

具体的にはエネルギーの自給自足や強固な製造業、持続可能な食料システム、そしてデジタルインフラの強化などに国家として注力する必要があるでしょう。
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文=James Riney

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