特に防衛の分野ではサイバーセキュリティや人工知能、ロボティクス、ドローンなどがイノベーションの機が熟した分野として際立ち、「既存の産業複合体」✕「スタートアップ・エコシステムのアジャイルさ」のシナジーが求められています。
また、歴史には身も蓋もないような教訓もあり、これもその1つですが、多くの革新的なイノベーションは防衛の危機に際して生まれてきました。GPSやインターネットが、当時の米軍のニーズが集約されて生み出された技術であることがその証拠です。
日本もまた、防衛需要を利用してより広範な技術進歩を促進してきた歴史があります。例えば航空宇宙やロボティクスへの防衛投資は、後に民間応用を経て、産業界に変革をもたらしました。
つまり理想的なシナリオとしては、紛争リスクの高まりが「触媒」となって、実際の有事に発展することなく技術革新や産業革新を再び巻き起こすことが期待されます。
戦争の恐怖がもたらす切迫感が、冷戦時代の宇宙開発競争のような発展を促す方向に働けば、その成果が国家の安全保障を強化するだけでなく、社会全体の発展へとつながるでしょう。
私たちは今、1914年の投資家たちと同じような岐路に立たされているのかもしれません。
ただし彼らと異なり、私たちは単なる軍事衝突のリスクをはるかに超えた不確実性を抱えているため、それを踏まえて経済的および戦略的に計画する必要があります。今は核の時代だからです。過去の紛争との直接的な比較が無意味なほど、大きな代償を伴う危機に晒されているのです。
とはいえ、本質的な真実は変わりません。「備え」と「先見性」こそが、国家が存続し、繁栄し続けるための基盤となるでしょう。
「戦場の霧(戦争における不確定要素)」は、投資家にも軍の指揮官にも見通せないほど濃い霧かもしれません。
しかし、そんな霧の中でも、日本のような国は「防衛の備え」と「経済革新」の2つの羅針盤を持って進み続けなければならないのです。
その先の未来で不測の事態に直面するのは変わらないかもしれません。それでも、それが準備不足の結果ではなく、戦略的な強さや経済的活力を土台とした平和の追求に挑んだ結果であるほうを私たちは選ぶべきではないでしょうか。
そしてこのような時代におけるスタートアップの役割は強調しきれないほど重要です。日本の成長の「原動力」として、さらには紛争の影がますます広がる世界で求められるレジリエンスの「設計者」として、スタートアップ企業の活躍が切望されているのです。
連載:VCのインサイト
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