これは社会の結束や調和に貢献する一方で、画期的なイノベーションを生み出すかもしれない「型にはまらない視点」を持った「出る杭」の活躍を妨げる圧力にもなります。
政府が宣言しているように、これから日本がイノベーションの文化を育んでグローバルリーダーを目指すのであれば、この「出る杭」の扱い方を見直すことが不可欠でしょう。
まず考えなければならないのが、リスクテイクが単なる経済変数ではなく、進歩に不可欠な要素だということです。
Andreessen Horowitzのマーク・アンドリーセンはこの「出る杭」の人材ことを「martyrs to civilizational progress(文明進歩の殉教者)」と呼び、その自己犠牲的な性質を強調しています。「合理的な人間は自分を世界に合わせる。非合理的な人間は世界を自分に合わせようと粘る。それゆえに、あらゆる進歩はこの非合理的な人間にかかっている」と文学者ジョージ・バーナード・ショーが表現したような生き方を彼らはしているのです。
イーロン・マスクやリチャード・ブランソンのような有名な「出る杭」も、この逆説的な真理を体現しています。
イーロン・マスクはSpaceXやTeslaなどの企業を生み出し、その常識を塗りかえる数々の挑戦が称賛されるのと同じくらい、SNS上の悪ふざけでよく物議を醸しています。
ビジネスにおける冒険的なリスクテイキングで知られる実業家のリチャード・ブランソンも、極端な「リスクテイクの精神」を体現しています。
より身近なところでは前澤友作氏も、リスクテイク型の思考がいかにビジネスの革新につながるかを示す良い例です。
また、これらの人物は複雑な恋愛事情を抱えている点でも共通しています。イカロスのように太陽に近づきすぎる挑戦的な気質が、個人の人生として落ちていくリスクになる一方で、革新的なアイデアを実現することにつながっているのでしょう。