しかし、実は彼がVCになる前は「ジャーナリスト」だったことはあまり知られていないかもしれません。
大学時代、モリッツはオックスフォード大学のクライスト・チャーチで歴史学を専攻し、そのあとペンシルベニア大学のウォートン・スクールでMBAを取得しました。
そして最初のキャリアとして、ジャーナリズムの世界に足を踏み入れたのです。『タイム』誌の記者になったモリッツの仕事は、当時(1980年代前半)のシリコンバレーで急拡大するテックシーンを取材して記事を書くことでした。
このキャリアで彼はテック業界に関する深い知識を得ることとなり、それはAppleの黎明期を詳述した著書『The Little Kingdom』からも明らかとなりました。
同書はSequoia Capitalの創業者ドン・バレンタインの目にも留まり、彼からオファーを受けたモリッツは1986年にSequoia Capitalへ入社しました。
このようにベンチャーキャピタリストへと転身し、新しい世界に飛び込んだモリッツは、その後、投資実績を積み上げて急速に頭角を現していったのです。
ジャーナリストからベンチャーキャピタリストへの転身は、モリッツにとってただのキャリアチェンジではなく、これまで培ってきたユニークかつVC業界と意外にも関連が深いスキルセットを応用できる機会となりました。
ジャーナリスト時代に磨かれた彼の分析力やリサーチ力は、スタートアップのポテンシャルの評価や、市場動向の把握に非常に役立つスキルだったのです。
さらに、ジャーナリストにとって必須スキルである「説得力のあるストーリーを語る力」は、ベンチャーキャピタルにおいても、投資家へのピッチや企業ビジョンを明確に伝える場面などで欠かせません。
モリッツ自身もスタンフォード・ビジネス・スクールからのインタビューで次のように説明しています。「何も知らないところから取り組みはじめて、多くの資料やファクトを集め、その膨大な情報から重要なものを抽出し、説得力のある意見を形成して決断を下すことは、物語を書く過程とよく似ています」。