スタートアップ

2024.02.29 08:30

バーンレートだけを見ても、そのスタートアップの可能性は分からない

最近のスタートアップを取り巻く環境の変化は、特に金利の上昇もある中、投資家がスタートアップを評価する際に見る指標やその評価方法に大きな変化をもたらしています。

2021年までは、多くの投資家は効率性には目もくれず、成長性ばかりを重視していました。それが今では一変し、「バーンレート」を重視する傾向が強まっています。

しかし、このバーンレートの重視には注意が必要です。スタートアップの評価基準がバーンレートに偏りすぎれば、大事な全体像を見落としてしまう可能性もあるからです。

スタートアップにおけるバーンレートの考え方は複雑ですが、2015年にFounders FundのScott Nolanが書いた記事には時代を超えた洞察が示されています。

同記事でNolanは、バーンレートは企業の戦略的意思決定や優先順位付け、実行スピードという文脈の中で考慮されるべき数字に過ぎないと説いています。つまり高いバーンレートは積極的な資金活用を示唆するものの、それ単体で評価するべきものではないということです。

それよりもキャッシュがなぜ、どのように使われているのかを考慮した上で判断するアプローチをNolanは推奨しています。以下の図が示すように、支出の質や効果を評価することが、スタートアップの健全性や将来性を理解する上で極めて重要であると彼は説明しています。


バーンレートが高く、(売上成長率だけでなく全体的な進捗率という意味で)効率性が低いスタートアップはベンチャーキャピタルの投資対象として明らかに望ましくありません。一方で、バーンレートは低いが、実行スピードが遅いスタートアップも同様に魅力的な対象ではないでしょう。究極の理想は、「高い効率」と「速い実行スピード」の組み合わせです。適度にキャッシュを使って、大きな前進を達成できるこのベストな状態を目指したいところです。

こうした観点から考案されたのが、Craft Venturesでパートナーを務めるDavid Sacksの紹介する「バーン・マルチプル」という指標です。この指標は、「企業が成長を生み出すために資金をどれだけ効果的に使っているか」を評価するためのツールとして非常に有用です。簡単に説明すると、バーン・マルチプルは、ネットバーン(期間内に投下した金額)を新規に積み増したARRで割ることによって計算されます。賢くお金を使って価値を創造することの重要性を表す指標として作られています。
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文=James Riney

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