欧州

2024.02.16 13:00

ウクライナ軍、待望の新型ロケット弾GLSDBを使い始める 米供与の新兵器

長距離ロケット弾GLSDBのイラスト図(Shutterstock.com)

ウクライナ軍の米国製新型ロケット弾「GLSDB(地上発射型滑空弾)」が戦闘で使われ始めたようだ。ロシアが2年前に拡大した戦争で、ウクライナ側が危機的な局面を迎えるなかでのことである。皮肉なことだが、同じく米国のロシアに同調する共和党議員らのせいで、ウクライナ軍は深刻な砲弾不足にあえいでいる。

重量約270kg、射程約150kmのGLSDBは、ウクライナ軍の155mm榴弾の不足を補う一助にはなるかもしれない。ただし、文字どおりほんの少しの助けだ。長距離攻撃用のロケット弾であるGLSDBは砲弾ではない。砲弾のように使うのは本来は浪費と呼ぶべきだろう。

GLSDBがウクライナ軍による攻撃で使われたらしい最初の証拠は、14日にネット上に現れた。箱に入れられたロケット弾の残骸の動画をロシア軍側が投稿し、そこにGLSDBの特徴的な尾翼の一部とみられるものも含まれていた。

ロシア側はこの残骸について、ウクライナ東部ルハンスク州クレミンナ周辺で13日にあった攻撃で使われたものだと主張している。この攻撃の目標は、クレミンナ近郊の集落ジトリウカのすぐ東にあったロシア軍のロケット発射機2基だった可能性がある。ウクライナ軍のドローン(無人機)は、これらの発射機が爆発し、巨大な火の玉が広がる様子を上空から観察していた。

実際にジトリウカでの攻撃にGLSDBが使われたのだとすれば、使用兵器の選択としては奇妙に思われる点もある。ジトリウカはクレミンナ方面の前線からわずか数kmしか離れておらず、なぜこれほど近い距離の攻撃に射程が150kmほどもある長距離攻撃用の弾薬を浪費したのかという疑問が浮かぶからだ。

斟酌すべき事情があったのかもしれない。たとえば、ロシア側のロケット発射機群を攻撃するのに、たまたま適切なタイミングで適切な場所にGLSDBの発射機があったので、急に発射したのかもしれない。あるいは、GLSDBを不釣り合いな距離で使わざるを得ないほど、ウクライナ側の付近の野砲は砲弾が不足していたのかもしれない。

米議会共和党がウクライナへの支援を妨害しているために、ウクライナ軍の砲兵が1日に発射する砲弾数はわずか2000発程度と、おそらくロシア側の5分の1の水準に落ち込んでいる。

GLSDBに関してウクライナにとって幸運だったのは、米国のジョー・バイデン政権が1年前、つまり下院共和党がごくわずかな差で多数派を占めるのを利用して支援を妨げ始める前に、ウクライナ向けにGLSDBを開発するための資金を米ボーイングとパートナーのスウェーデンのサーブに支出していたことだ。

契約額は3300万ドル(約49億円)だった。有翼の滑空爆弾であるGBU-39小直径爆弾(SDB)と、余剰になったM26ロケットモーターを組み合わせたGLSDBは、1発4万ドル(約600万円)と安上がりだ。

3300万ドルの大半が開発費に費やされていなければ、ウクライナはGLSDBを数百発取得できるかもしれない。
次ページ > GLSDBのようなロケット弾は砲弾と用途が異なり、代用品にならない

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事