欧州

2024.02.15 09:00

ウクライナ、ロシア黒海艦隊の大型揚陸艦をまたも撃沈 月に1隻ペース

ウクライナのクリミア半島セバストポリの港で2013年夏に撮影されたロシア黒海艦隊のロプーチャ級揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」(Shutterstock)

ウクライナのクリミア半島セバストポリの港で2013年夏に撮影されたロシア黒海艦隊のロプーチャ級揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」(Shutterstock)

ウクライナ軍が2022年3月24日にロシア占領下の南部ベルジャンシク港を攻撃した際、ロシア黒海艦隊のロプーチャ級揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」は同港から辛うじて脱出した。

全長112.5mのクニコフは、近くにいたタピール級揚陸艦「サラトフ」が爆発して飛び散った残骸で損傷し、艦長は死亡した。

それから23カ月が経ち、ウクライナ軍はクニコフを狙うために戻ってきた。2月14日にネット上に出回った映像には、ロシア占領下にあるクリミア南端のアルプカ沖でクニコフが燃えて沈むところとされる様子が映っている。

ウクライナ軍はなぜクニコフを狙ったのか。そして、なぜクニコフは爆薬を搭載した水上ドローン(無人艇)を使用したとされている攻撃を受けた後に爆発したのか。それは、ロシア軍がウクライナ南部に展開する自軍の守備隊に弾薬を運ぶために揚陸艦を使用しているからに他ならない。

ロシアが2022年にウクライナに全面侵攻を開始した際、黒海艦隊はロプーチャ級6隻とタピール級3隻の計9隻の揚陸艦を保有していた。2年にわたる激戦で、ウクライナ軍はロプーチャ級3隻とタピール級のサラトフを爆破または撃沈した。

ウクライナ軍はまた、黒海艦隊の巡洋艦1隻、潜水艦1隻、補給艦1隻、数隻の哨戒艇および小型揚陸艇、そしてミサイル搭載コルベット艦「イワノベツ」を爆破・撃沈している。

これらの損失は、侵攻前に黒海艦隊が保有していた艦艇の5分の1を超える。ウクライナ軍のロケット弾や巡航ミサイル、水上ドローンによる攻撃で、ロシア海軍は排水量計約1万5000トンの艦艇を失い、昨年新造された艦艇の計1万8000トンはほぼ相殺された

このため、ロシア海軍は総トン数が伸び悩んでいる、数少ない主要な海軍のひとつとなっている。総トン数トップ10の海軍の大半は多くの小型戦艦を、数は少ないもののはるかに大型の新造艦と入れ替えることで着実に増強している。

ロシアが占領しているウクライナ東部ドネツクの北西に位置し、ウクライナ軍が拠点を置いている廃墟と化したアウジーイウカでは、ロシア軍が多大な犠牲を払いながらゆっくりと前進しているかもしれない。だが、約500km離れたクリミア沖では、ロシア軍は大敗を喫している。

黒海艦隊はこのところ、おおよそ月に1隻のペースで艦船を失っており、攻撃に最も脆弱(ぜいじゃく)なクリミアの港から、そしてロシア南部ノボロシースクからも、ほとんどの艦船を引き揚げる以外に手はない。

だが、侵攻前に保有していた9隻のうちどうやら4隻が残っているロプーチャ級とタピール級の艦船は、ウクライナ軍の射程圏内を航行せざるを得ない。ウクライナ南部への弾薬運搬という主要任務のためにはクリミアに停泊する必要がある。そうすると攻撃を受けやすい。

戦争が3年目に突入しようとしており、アウジーイウカ以外のあらゆるところで戦況がこう着状態に陥っている中、ウクライナの海軍と空軍は艦船への攻撃をさらに強化することが予想される。特に揚陸艦を標的にした作戦を展開するだろう。

ロシア、ウクライナ両軍とも大きく前進しておらず、戦力の温存と立て直しに専念していることから、今年は陣地争いの年となりそうだ。

ウクライナ軍が残り4隻のロプーチャ級とタピール級を沈めることができれば、ウクライナ南部への主要な海上補給線を断ち切ることができ、クリミアとヘルソン州南部にいるロシア軍の連隊と旅団を追い詰めることができるはずだ。

艦船に加えて、ロシアとクリミアを結ぶケルチ橋を破壊できれば、そうした連隊や旅団の兵士らを飢えさせ、2025年に南部でウクライナ軍が前進するための条件を整えることができるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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