とはいえ、GLSDBがたとえ500〜600発あっても、155mm砲弾の代えにはならない。単純に数量でいっても、支援国から十分な供給があればウクライナ軍が発射する砲弾数は1日でその10倍にのぼるからだ。
ほとんどの155mm砲弾は無誘導で、射程もせいぜい25kmほどしかなく、搭載されている炸薬も11kg程度だ。それに対してGLSDBはGPS(全地球測位システム)で誘導され、射程は6倍、炸薬量は8倍ある。
野砲などから撃ち出される砲弾は、敵部隊が攻撃の数時間前、前線から数km後方の開けた場所に集結し、接触線の方向に移動を開始する際に最も威力を発揮する。数十発の砲弾の弾幕は数千平方mの範囲で車両を破壊したり、歩兵を殺害したりできる。
対照的に、GLSDBが最も威力を発揮するのは、前線からかなり離れた場所の「点目標」を攻撃する場合だ。具体的に言えば、補給基地や弾薬庫、司令壕、防空レーダーなどである。これらの拠点はあまり目立たないながら、ロシアの戦争努力全体にとっては重要なものだ。
つまり、砲弾は前線近くの広範なエリアで敵の戦闘部隊を日々つぶすのに用いられ、GLSDBのような長距離攻撃用の弾薬は補給や指揮のネットワークなど、機械戦の基盤インフラをピンポイントでたたくのに使われるものだということだ。
ウクライナ軍は今回、前線からわずか数kmの距離にあったロシア側のロケット発射機に対してGLSDBを発射したのかもしれないが、いずれにせよGLSDBによる短距離攻撃が多く行われるとは考えないほうがよい。GLSDBはそうした攻撃用の兵器ではないのだ。
GLSDBがウクライナの戦場に到着したからといって、ウクライナ軍で深刻化する砲弾不足問題の解決にはたいして役に立たないのが実情だ。
(forbes.com 原文)