小型の自爆ドローン(無人機)を毎月数十万機投入しているウクライナ軍は、ロシアによる全面戦争の最前線から25km後方あたりまでの帯域をキルゾーン(撃破地帯)にしている。
これらのドローンはロシア軍の部隊や大砲、防空車両、そしておそらく最も重要なことに補給線を容赦なく攻撃し、前線一帯に展開するロシア兵に悪夢のような状況を生み出している。
ロシアのある軍事ブロガーは、この範囲では「ただ道路を車両で走るだけでも命を危険にさらすことになる」と書いている。「基本的にこうした状況は2024年の春から1年にわたって続いているが、いまでは敵の攻撃頻度が格段に高まっている」と続けている。
ウクライナ軍は2024年初め、弾薬不足が長引いていた最悪の時期に、小型ドローンを頼みにするようになった。現在、ウクライナ各地にある工房のネットワークは、重量1kgかそこらで小型弾頭を装着される小さなFPV(一人称視点)ドローンを月に20万機以上製造しているとされる。
全面戦争の開始から3年3カ月近くたつなか、ウクライナ軍のドローンは複雑で絶えず進化するシステムを形成しており、装甲や防護ネット、散弾銃、ジャマー(電波妨害装置)などによるロシア軍の対処の取り組みの一歩先を行き続けている。
前出の軍事ブロガーは、ウクライナ軍のドローンは「固定翼タイプの無人機による事前偵察を経て群れで飛来する」と説明している。使い捨てのFPV自爆ドローンは、小型爆弾を投下する爆撃ドローンによって補完されている。このほか、無線信号を受け取り増幅後に送り出す、中継ドローンも使われていて、最も小型のFPVドローンの飛行距離を数kmから16km超に伸ばしている。
ロシア軍も毎月何十万機というドローンを使用しているが、概してウクライナ軍のジャミングのほうが優れており、ロシア側の無線操縦型の多くのドローンを飛行不能にできている。一方、スプールから繰り出される数kmの光ファイバーケーブルを通じて通信する有線操縦型は、阻止するのがもっと難しい。