欧州

2024.02.15

ウクライナ軍の貴重な強襲旅団がアウジーイウカに介入 「積極防御」実践

マックスプロ装輪装甲車(Flying Camera / Shutterstock.com)

ロシアのウクライナ全面侵攻から約2年間、ウクライナ軍の第110独立機械化旅団は東部ドネツク州の防御拠点アウジーイウカを防衛し続けてきた。

だが、2000人規模だった第110旅団の生き残った将兵らは、ここ数日の間についに西へ退却し、ロシア軍がじわじわと進める包囲を逃れた。

第110旅団は、増援に投入されたウクライナ軍屈指の旅団、第3強襲旅団の砲声がとどろくなか、廃墟と化しているアウジーイウカから撤退した。第3強襲旅団はウクライナ軍に2個しかない強襲旅団の1つ(もう1つは第5強襲旅団)で、名前が示すように強襲、つまり攻撃の訓練を受けている部隊だ。

しかしアウジーイウカでは、兵力も火力もロシア側に劣るウクライナ軍は防御する側にある。

ウクライナ軍は砲弾が絶望的なまでに不足している。これは昨秋以来、ロシア寄りの米議会共和党が米国の対ウクライナ支援を妨害してきたことの直接の帰結だ。アウジーイウカ方面のウクライナ軍部隊も砲弾が枯渇し、現地の数個旅団は十数個相当とみられるロシア軍の大軍をかろうじて押しとどめてきたのが実情だった。

ウクライナ軍の東部コマンド(統合司令部)は強襲旅団を防衛作戦に投入した。これは「積極防御」の実践でもある。積極防御とは柔軟で機動的、攻撃的な防御のことだ。

第3強襲旅団の積極防御は、先週ごろ、アウジーイウカ北西のコークス工場に展開した直後から顕著にみられた。

同旅団の米国製マックスプロ装甲車の砲手はヘルメットに取り付けたカメラで、コークス工場の敷地内を駆け回る自車と、M2重機関砲を撃ちまくる自身の姿を撮影している

第3強襲旅団の狙いがこのコークス工場の死守にあるのは明白だ。市の西部で守備隊を立て直しつつ、以前より敵側にさらされる部分が少なくなる新たな前線で、コークス工場を北方面の拠点にする考えかもしれない。

映像に見えるような、軽快な装甲車による機動や速射は第3強襲旅団の戦術の1つだ。とはいえ、ロシア側から撃ち込まれた砲弾が近くで爆発している様子は、この戦術が兵士らにとってどれほど危険かもまざまざと示している。

「ウクライナは砲弾不足をまずもってFPV(1人称視点)ドローン(無人機)、そしてもちろん兵士たちの命で補っている」ウクライナの軍事アナリストであるミコラ・ベレスコウは最近、ポッドキャストの番組でそう語っている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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