欧州

2024.02.16 11:00

夜間に包囲して襲撃 ウクライナが編み出した無人艇群による艦艇の仕留め方

2019年9月、トルコのボスポラス海峡を通るロシア海軍の大型揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」(ahmetozkanphotography / Shutterstock.com)

2019年9月、トルコのボスポラス海峡を通るロシア海軍の大型揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」(ahmetozkanphotography / Shutterstock.com)

ウクライナ海軍が無人艇(水上ドローン)を初めて実戦投入したのは2022年10月のことだった。爆薬を搭載した全長約5.5mの無人艇「シーベビー」たちは、衛星経由で操縦され、占領下のウクライナ南部セバストポリにあるロシア海軍黒海艦隊の停泊地を襲った。ただ、このときは大きな損害を与えられなかった。

ウクライナはその後1年近くかけて無人艇やその戦術の改善を図った。そして、それが完了すると「ロシア艦艇狩り」を本格的に始めた

クリミア南部沖で14日、ウクライナの無人艇少なくとも3艇が黒海艦隊のロプーチャ級大型揚陸艦「ツェーザリ・クニコフ」を狙った襲撃(編集注:ウクライナ国防省情報総局のキリロ・ブダノウ局長は無人艇「マグラV5」5艇で同艦を破壊したと述べている)は、その戦術を明らかにした。「Gunny」(@FouthTimeLucky)というアカウント名でソーシャルメディアに投稿している海事専門家が手順を解説している

全長112.5mのツェーザリ・クニコフに無人艇1艇が右舷側から接近する。2艇目は左舷側から近づいていく。3艇目は後方で待機し、操縦士は無人艇の赤外線カメラの映像で攻撃を監視する。

高さの低いこれらの無人艇は、レーダーや赤外線センサー、あるいは目視でも見つけにくい。おそらく音もそれほど大きくないだろう。また、ウクライナ海軍はロシア側の乗組員の警戒心が最も緩む夜間に攻撃する傾向にある。

無人艇の映像によれば、ツェーザリ・クニコフでは当時、少なくとも1人の水兵が甲板で見張っていたが、手遅れになるまでには無人艇を発見できなかったもようだ。

1艇目はツェーザリ・クニコフの右舷側に突入する。衝突したのは、主要な機械類が置かれている艦体中央部付近だったとみられる。爆発が起こり、吸気口と煙突から炎が吹き上がる。

この攻撃でおそらく機械室は水浸しになり、水はさらに巨大な車両格納スペースにも流れ込んだ。この一撃だけでツェーザリ・クニコフは沈没していたかもしれない。左舷側に2艇目が突っ込むと、ツェーザリ・クニコフと乗組員の多くの運命は決まった。ロプーチャ級大型揚陸艦は通常、水兵ら約80人が乗り込む。

ツェーザリ・クニコフは傾き、沈み始めた。日が昇ると、黒海艦隊の艦艇と航空機が残骸の調査や、おそらく生存者の捜索のために現場海域へ向かった。

ウクライナの無人艇は昨年8月に初めてロシアの艦艇を攻撃して以来、ツェーザリ・クニコフを含むロプーチャ級大型揚陸艦2隻、タランタル級コルベット1隻を撃沈している。大型艦を1隻も持たないウクライナ海軍側は無人艇以外の攻撃でも、ロシア海軍の艦艇を数多く失わせている。

今回撃沈されたツェーザリ・クニコフは、黒海艦隊がウクライナ南部のロシア軍部隊へ弾薬を輸送するのに使っていた揚陸艦8〜9隻の一隻だった。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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