前澤さんはラグジュアリーを考えるに不可欠な異文化理解に関心がとても強く、パンデミック中に毎月開催していたラグジュアリーの勉強会でも毎回、デザインセンスのみならず文化センスにも光るコメントをされていました。
彼女はロンドン芸術大、セントラル・セント・マーチンズでコミュニケーションデザイン修士号を取得後、イタリアのベネトン・グループのコミュニケーション研究機関「ファブリカ」でのデザイナー・イン・レジデンスを経験します。
イタリアの東北部、トレヴィーゾにある16世紀の貴族の館を安藤忠雄の設計が気持ちの良い現代的な空間に蘇らせたのが「ファブリカ」です。そこで前澤さんが世界各国からやってきたクリエイターとさまざまなプロジェクトをしている頃、彼女と知り合いました。その後、彼女の異文化への深い理解に基づく文章を時々読んでました。
さて、これからの連載も、毎月、前半と後半を交互に担当という方式を継承します。ただ、前澤さんもぼくと同じくヨーロッパで生活しているため、日本のことを語る時、2人ともやや距離がある物言いになるかもしれません。「そういう性格の連載」という目で読んでいただければと願っています。
いずれにせよ、日本の人や企業がラグジュアリーという領域でビジネスをするかどうか、あるいはラグジュアリーという言葉を意識的に使うかどうかは脇におくとして、世界各地で散見されるラグジュアリーにまつわる現象と意味を多角的におさえられる素養がより求められているのは間違いないです。ラグジュアリーについて議論ができればこそ、あえてラグジュアリーという言葉を使わずにラグジュアリー領域に戦略的に踏み込めるでしょう。
ラグジュアリーの議論ができないでそれをやると、どこにあるかも知れない地雷を踏んで木っ端みじんともなりかねません。それだけ注意をしないといけない言葉です。
前澤さん、以上のように執筆者交代の経緯と前澤さんの紹介を書きましたが、ラグジュアリーに関する姿勢などについてご見解を披露頂けたら幸いです。