ウクライナ軍のドローンが今回、ロシア兵6人を追跡して数人を死傷させるのには、数時間かかったとみられる。十分な補給のある野砲なら、ものの数分で仕留められていたかもしれない。
ウクライナ側の砲弾不足のおかげで砲撃を恐れずに済むようになってきたロシア軍は、一段と大胆になり、アウジーイウカに南北両側から着実に前進しているもようだ。防衛戦略センターは「ロシア軍はフルシェウスキー通りの遮断に注力している」と警告している。
ロシア側にフルシェウスキー通りを遮断されれば、第110旅団は、その時点でアウジーイウカにとどまっていた場合、補給の確保が困難になるだろう。ただ、アウジーイウカから西へ5kmほどのセベルネ村に第53独立機械化旅団がとどまっている限りは、この村とアウジーイウカの間にある樹林帯に沿ってトラックが移動することは可能かもしれない。
しかしその場合、トラックは移動中ずっと銃撃や砲撃にさらされる恐れがある。セベルネの東側の土地は平坦で、残っている木々も冬は葉が落ちているので、覆いとしての役割はあまり期待できない。ロシア軍の部隊がいる場所は、このルートから1.5km程度しか離れていない。
こうした危険を踏まえると、ウクライナ軍の指揮官たちは、避難する意思のある民間人らと共に第110旅団をアウジーイウカから引き揚げさせることを、今すぐ決断してもいいだろう。
これは軍事的な決断であると同時に政治的な決断でもある。折しも、キーウの政治は揺らいでいる。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、カリスマ的人気を誇る軍トップのヴァレリー・ザルジニー総司令官を解任し、後任に不人気なオレクサンドル・シルスキー陸軍司令官を据えた。
ザルジニーは、機動防御などによって自軍の損耗を最小限に抑えるのを支持する立場だったとされ、対照的にシルスキーは、大きな損耗もいとわず、比較的固定した陣形で粘り強い戦闘を行うのを支持する姿勢だとされる。
(forbes.com 原文)