ウクライナ軍のドローン(無人機)は、ロシア兵6人が北側から市内へ歩いてくるところを発見する。その後、別の1機もしくは複数のドローンがロシア兵らの上に擲弾を投下し、大半を死傷させる。だが、殲滅はできなかった。
ロシア兵らは、アウジーイウカ中心部への主要な補給ルートであるフルシェウスキー通りまで700mの地点まで侵入していた。市中心部では、ロシアが2年前にウクライナに対する戦争を拡大して以来、ウクライナ軍の第110独立機械化旅団が疲弊しながらも持ちこたえてきた。
だが、第110旅団や近傍の部隊は歩兵も弾薬も尽き、そして残された時間もなくなりつつある。一方のロシア軍の2個野戦軍は、兵士が肉挽き機のようにつぶされるのもいとわず、アウジーイウカに次から次へと部隊を投入している。
ロシア軍の第2諸兵科連合軍と第41諸兵科連合軍は、昨年10月上旬にアウジーイウカ方面への攻撃を始めてから、ウクライナ軍の地雷や野砲、ドローン、塹壕に陣取る歩兵や戦闘車両による反撃で途方もなく大きな損耗を被ってきた。
しかし、ロシア側は大詰めを迎えつつある3度目の冬季攻勢で、アウジーイウカの攻略もしくは破壊を主要な目標にしている。ロシア軍はほかの戦域での前進は数百m程度にとどまっているが、アウジーイウカでは南北で数km押し込んでいる。
ロシアの指導部は、廃墟と化しているこの小さな都市を占領するために、攻勢の戦闘力の大半を消耗してもやむを得ないと判断しているようだ。アウジーイウカは戦争拡大前には3万人あまりが暮らしていたが、現在いるのはごく少数の民間人と2000〜3000人程度の守備隊だけだ。
ウクライナのシンクタンクである防衛戦略センター(CDS)は「敵はアウジーイウカの攻略に力を集中している」と分析している。「リソース不足のために、ロシア軍司令部はほかのすべての前線では進軍ペースを落とさざるを得なくなっている」
200万人規模のロシア軍のうち、前方展開部門としてウクライナに配置されている40万規模の軍隊は、前線の兵力を維持するために、元受刑者を含め訓練不足の徴募兵を大量に受け入れることを余儀なくされている。また、近代的な装甲車両も不足している。
もっとも、新兵を十分に訓練したり近代的な車両を確保したりするのに苦労しているのは、100万人規模のウクライナ軍も同じだ。最も深刻なのは、ウクライナ側の砲弾がロシア側の5分の1しかないことだ。米議会のロシア寄りの共和党議員が米国の軍事援助を妨害し続けている必然的な結果である。
ロシア軍の歩兵6人にアウジーイウカ市内への侵入を許したのも、ウクライナ側の砲弾が枯渇しているためかもしれない。