それでも、ウクライナ軍は後退していない。東部ドネツク州アウジーイウカのように撤退すべきかもしれない戦域でさえ、引き下がっていない。それどころか、ひとつの戦域では、ロシアがウクライナで拡大した戦争のおよそ1000kmにおよぶ前線のなかでも、とくに困難な区域であるにもかかわらず、逆に前進を遂げている。
もっとも、それは大きな前進ではない。また、主にドローン(無人機)による戦果なのも確かだ。
先週、ウクライナ海兵隊第36独立海兵旅団のドローン操縦士は、南部ヘルソン州を流れるドニプロ川左岸(東岸)沿いの集落クリンキの外れに、クワッドコプター(回転翼が4つのドローン)でウクライナ国旗を立てた。第36旅団などの海兵隊部隊は、この集落に幅1.6kmほどの浅い橋頭堡(きょうとうほ)を築き、保持している。旗を立てたのは、砲弾で穴だらけになった集落東端辺りだ。
橋頭堡の海兵隊員は1週間前、西へ数百m前進していた。これは数日前にウクライナのドローンチームが実施した作戦で、ロシア側の最も危険なドローン操縦士をクリンキの隠れ家で殺害したことで可能になった。
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— WarTranslated (Dmitri) (@wartranslated) February 6, 2024
国旗の掲揚にドローンを使わなくてはならなかったことは、現地の状況を物語る。クリンキの樹木の生えていない場所を移動するのは、ウクライナ側、ロシア側どちらの部隊にとっても極めて危険なのだ。実際、ロシア軍の第26自動車化狙撃連隊は先月、現在旗が翻っている場所から見える距離の場所で、戦車1両と他の戦闘車両1両、2つか3つの歩兵チームを失っている。
また、ウクライナ側が純粋に心理的な作戦のためにドローンを飛ばし、ロシア側がそれを阻めなかったことも、現況をよく表している。ウクライナの海兵隊員は4カ月ほど前にボートで広大なドニプロ川を渡り始め、クリンキに足掛かりを得て、今もそこに踏みとどまっている。コールサイン「マジャル」で知られる有名なドローン操縦士をはじめ、熟練のドローン操縦士たちによる援護を受けながら、橋頭堡に張り付いている。