欧州

2024.02.11

橋頭堡のウクライナ部隊がドローンで国旗掲揚 危険極まりない戦場で抗戦続ける

ウクライナ国旗(Shutterstock.com)

2年わたる激しい戦いを経て、ウクライナ軍は兵力面でも火力面でもロシア軍に対して劣勢になっている。各旅団は経験のある歩兵が絶望的なまでに不足し、弾薬も枯渇している。

それでも、ウクライナ軍は後退していない。東部ドネツク州アウジーイウカのように撤退すべきかもしれない戦域でさえ、引き下がっていない。それどころか、ひとつの戦域では、ロシアがウクライナで拡大した戦争のおよそ1000kmにおよぶ前線のなかでも、とくに困難な区域であるにもかかわらず、逆に前進を遂げている。

もっとも、それは大きな前進ではない。また、主にドローン(無人機)による戦果なのも確かだ。

先週、ウクライナ海兵隊第36独立海兵旅団のドローン操縦士は、南部ヘルソン州を流れるドニプロ川左岸(東岸)沿いの集落クリンキの外れに、クワッドコプター(回転翼が4つのドローン)でウクライナ国旗を立てた。第36旅団などの海兵隊部隊は、この集落に幅1.6kmほどの浅い橋頭堡(きょうとうほ)を築き、保持している。旗を立てたのは、砲弾で穴だらけになった集落東端辺りだ。

橋頭堡の海兵隊員は1週間前、西へ数百m前進していた。これは数日前にウクライナのドローンチームが実施した作戦で、ロシア側の最も危険なドローン操縦士をクリンキの隠れ家で殺害したことで可能になった。

国旗の掲揚にドローンを使わなくてはならなかったことは、現地の状況を物語る。クリンキの樹木の生えていない場所を移動するのは、ウクライナ側、ロシア側どちらの部隊にとっても極めて危険なのだ。実際、ロシア軍の第26自動車化狙撃連隊は先月、現在旗が翻っている場所から見える距離の場所で、戦車1両と他の戦闘車両1両、2つか3つの歩兵チームを失っている。

また、ウクライナ側が純粋に心理的な作戦のためにドローンを飛ばし、ロシア側がそれを阻めなかったことも、現況をよく表している。ウクライナの海兵隊員は4カ月ほど前にボートで広大なドニプロ川を渡り始め、クリンキに足掛かりを得て、今もそこに踏みとどまっている。コールサイン「マジャル」で知られる有名なドローン操縦士をはじめ、熟練のドローン操縦士たちによる援護を受けながら、橋頭堡に張り付いている。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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