これまでモノと人の移動を意味していたグローバル化は、アイデアと資金の移動へと方向転換する。近年のグローバル化の後退は、保護主義への逆行かと懸念されるが、むしろ貿易の性質が変わる可能性が高い。モノは国内で生産されるようになり、工業製品の貿易が減る。ハイスキルの人材はリモートで働くようになる。
KEYWORD 2 アメリカと中国の協調
中国には2030年代になんらかの政治体制の変化が起きるだろう。人口動態と政治が良い方向に進めば、積極的な拡大路線は転換され、高齢化する市民が穏やかで安心な生活を送れるようにシフトする。中国の高齢化は紛れもない事実で経済は減速する。高齢化によって今の社会のシステムか価値観が変わらざるをえない。
KEYWORD 3 アングロ圏の台頭
英語を話す国々は、つぎの30年に重要性が増すであろう集団を構成している。アメリカ、ナイジェリア、インド、オーストラリア、イギリスとアイルランド。各大陸で人口が多い(もしくは増える)国で話されているのが英語だからだ。この広義の英語圏は世界のGDPの4割を占め、人口でも経済規模でも重要性が高まる。
KEYWORD 4 中間層の世界
2050年に世界人口の約3分の2が中間層か富裕層になるだろう。この新しい大中間層は適切な医療や教育、食事や労働機会を得て、通信革命の恩恵を受けられる。貧しい国や人は減り、似たような所得水準になる。これは、人類の歴史上初めてのことであり、産業革命に匹敵するような大きな変化が起きることになる。
『2050年の世界 見えない未来の考え方』(遠藤真美訳、日本経済新聞出版)。豊富なデータと経済学、地政学、歴史的な洞察によって、30年後の未来を予測。世界の主要地域、グローバルな重大テーマを詳細に説明。
ヘイミシュ・マクレイ◎英インディペンデント紙経済コメンテーター。ガーディアン紙、インディペンデント紙の金融面エディターを歴任。英国プレスアワードの年間最優秀ビジネス・ファイナンス・ジャーナリスト賞など多数受賞。主な著書に『2020年 地球規模経済の時代』(アスキー)など。