気候・環境

2024.02.16 14:30

地球の再野生化とは? レフキンが説く「生き抜くための大転換」

Forbes JAPAN編集部

ジェレミー・リフキン(イラストレーション=べルンド・シーフェルデッカー)

もはや気象が「異常」であることが通常と言っていい。2023年は世界各地で史上最高気温を記録。大雨による災害や海面上昇も続いている。気候変動による影響が人類の生産活動に深刻な影響を及ぼす現代。「地球は再野生化している──」。『限界費用ゼロ社会』の著者で、日本でもファンの多いジェレミー・リフキン。『レジリエンスの時代 再野生化する地球で、人類が生き抜くための大転換』を上梓した、経済社会理論家で批評家の彼に新時代に必要な「大転換」についてインタビューした。

Forbes JAPAN2月号は、「『地球の希望』総予測」特集。戦争、気候変動、インフレなど、世界を揺るがすさまざまな事象が起きる「危機と混迷の時代」。2024年の世界と日本の経済はどうなるのか? 世界で活躍する96賢人に「今話したいキーワード」と未来の希望について聞いた。



──著書では「地球が再野生化している」と書かれ、私たちは環境面で奈落の際にじりじりと近づきつつあると警鐘を鳴らしています。

ジェレミー・リフキン(以下、リフキン地球温暖化が最も急速に進んでいる国は22カ国に拡大し、約5億4000万人が北上を余儀なくされた。気温が1°C上昇するごとに、移住者は10億人増え、 4°C上昇すれば、人類の半分が新天地を目指して北上することになるのだ。科学者の気候変動調査によると、私たちは地球上6度目の大量絶滅の危機に瀕している。最後の絶滅の時代は6500万年前だ。私たちは250年前に石炭紀の動物や植物の死骸を掘り起こし、石炭や石油、ガスといった化石燃料を基盤に工業文明を築き上げた。「進歩の時代」になり、これまでになかった豊かさを享受してきた。だが、この250年の豊かさの代償が、今地球をのみ込もうとしている自然の猛威だ。これまで頼ってきた策は通用しない。私たちは、世界観、経済の理解、統治の形態、時間・空間の概念、人間の最も基本的な欲求、地球との関係のすべてを考え直すしか生存の道はない。

──国連が2023年11月、各国が2030年までに温室効果ガスの削減目標を達成したとしても世界の平均気温は今世紀末までに2.9度上昇するという見通しを発表し、対策は不十分だとしています。私たちが最優先すべき有効な対策とは何でしょうか。

リフキン:気候変動という史上最大の危機に対して、いかにレジリエンスを基盤とした社会を構築するのかが問われている。そのキーとなるのが、デジタル・インフラストラクチャーだ。通信、エネルギー、モビリティ・ロジスティクス、水のインフラ全体をつくり直し、アルゴリズムやアナリティクスを駆使してインフラをデジタル化しなければならない。それを50年以内に成し遂げる。

人類史上、大きな文明の転換が起きる時に共通していたのが、通信、エネルギー、モビリティ・ロジスティクス、水の管理方法という4つについての決定的なテクノロジーが出現したことだ。4つの要素によって、パラダイムシフトとインフラシフトが起き、経済の統治方法が転換し、社会が根本から変革される。

レジリエンス革命の特徴

イギリスで起きた第1次産業革命では、電信、印刷機、石炭、鉄道が起点となった。アメリカが発祥の第2次産業革命は、電話・テレビ・ラジオ、石油、自動車、水力発電が起爆剤となった。だが、2008年のピークを境に、インターネット通信による第3次産業革命にその座を譲る。そして今、250年にわたる産業革命の期間を抜け出し始め、アルゴリズムによるビッグデータ解析をベースにした新しい第3次産業革命「レジリエンス革命」を特徴づけるインフラシフトが起きている。
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文=中沢弘子

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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