気候・環境

2024.02.16 14:30

地球の再野生化とは? レフキンが説く「生き抜くための大転換」

ジェレミー・リフキン(イラストレーション=べルンド・シーフェルデッカー)


──「レジリエンス革命」とは、デジタル・グリーンインフラが鍵になるということですか。
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リフキン:その通りだ。インターネット通信に、エネルギー・インターネット、モビリティ・インターネット、ロジスティクス・インターネットの3つが相互接続され、さらに4つめの「水のインターネット」との結合も見え始めた。4つのテクノロジーは「モノのインターネット(IoT)」と呼ばれるシステムで、気象災害に耐えるだけのレジリエンスを持つ。エネルギー・インターネットは、オフィス、家庭、地域などに設置された太陽光パネル、マイクロ送配電網などのエネルギーデバイスがネットワークに相互接続することで、それぞれが太陽光や風力の自家発電の余剰分をネットワークに送信し、地域や大陸を越えた電力の共有を可能にする。このシステムはデバイスのアルゴリズムによるビッグデータ解析によって最適化され、天候に左右されず、化石燃料よりコストがかからない。今後20年以内に国境を越え大陸間電力網を通して太陽光や風力の共有も実現できる。

この電力を動力源とした電気自動車や燃料電池車による自律型輸送によって、災害時のサプライチェーンとロジスティクスが保守できる。新しく登場した水資源管理の「水のインターネット」は、エネルギー・インターネットと同様の方法で、水不足の地域への水の共有を可能にする。この4つを監視し結合するのが、至る所に埋め込まれたIoTセンサーだ。その数はまもなく、数兆台に上る。収集する膨大なデータの増加に伴い、リアルタイムにデータ処理する小規模なエッジ・データセンターも増加する。

──インフラシフトによって、経済社会はどのようにレジリエントに変容していくのでしょうか。
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リフキン:第1次、第2次産業革命のインフラは効率を最大化するよう中央集中型に設計され、化石燃料への膨大な財政投資が可能な一握りのファーストムーバーが各産業における大企業となり、台頭した。化石燃料主導のインフラ産業以外においても、同じ現象が起きている。フォーチュン500社のGDP合計(2020年時点)は、世界のGDPの3分の1を占めているが、労働人口35億人のうち従業員数は約6300万人に過ぎない。最小限の支出で生産高を最適化するシステムの特徴だ。

一方、第3次産業革命のインフラは、分散型水平方向に設計されている。今後、20年間で分散型の度合いが高まり、何億もの世帯や何十万もの地元企業、店舗、住民組織が太陽光パネル、マイクロ送配電網、IoTを備えた建物、エッジ・データセンター、蓄電池などを所有し、それぞれのインフラが相互に接続されることで、循環型社会が促進されるだろう。資本主義論の柱である市場交換取引の価値が消え、効率や所有権に制限されなくなる。

マイクロソフト、デル、グーグル、フェイスブックといった第1世代のデジタル企業は中央集権的でかつ膨大なデータの高速処理に対応できず、40年後には市場から退場する可能性がある。一部は生き残ると思うが、新しい方法で繁栄していくはずだ。このような分散型の第3次産業革命のインフラに適応するには、地域に立地するハイテク中小企業が有利になる。経済は、地域のエネルギーや自然材料を利用したパッシブエミッションの製造業、自然資本も管理・保全する3号など気候変動対策にもなる産業に重点が移り、グローカル化が進む。このパラダイムは2040年代半ばまでには、厳密に資本主義的な経済モデルで動いている第三次産業革命とは思えなくなっているだろう。
(イラストレーション=ファブリツィオ・レンツィ)

(イラストレーション=ファブリツィオ・レンツィ)

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文=中沢弘子

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