気候・環境

2024.02.16 14:30

地球の再野生化とは? レフキンが説く「生き抜くための大転換」

ジェレミー・リフキン(イラストレーション=べルンド・シーフェルデッカー)

──書著には、経済システムの変革とともに、バイオリージョナル・ガバナンス(生命地域統治)、ピア政治へと転換すると書かれています。この新しいコンセプトとは?
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リフキン:気象災害は各自治体の統治区域の範囲を超え、まるごと1つのエコリージョン(生態地域)に影響を及ぼす。エコリージョンを共有する地域が共同で生態系の保全・管理を行うようになり、従来の政治的枠組みを超えた生命地域(バイオリージョン)の統治が生まれる。また、自分たちのバイオリージョンを保護するために、地域住民による自治体の統治への積極的な関与が起き、ピア議会による統治が展開する。その舞台で活躍するのが、包摂性に慣れ親しむデジタル・ネイティブ世代だ。彼らが、地域社会で自分達のコモンズを管理する責任を担い、自治体ともに統治を発展させていくようになるだろう。

──デジタル・グリーンインフラでは、EUと中国が先行しているとのことですが、日本のように超老齢化、地方の過疎化が進行している国が選択できるグリーンインフラ施策とは何でしょうか。

リフキン:日本全域で過疎化が進行しても、地域によっては小都市が機能し、そこから取り組みを始めることが可能だ。各地域が生命地域統治を行い連携することができれば、レジリエンスを基盤とする社会の構築が可能だろう。日本は元々環境との調和を尊重したレジリエントな見方を備えている。日本の伝統建築を見ても、世界最古の建築物ローマのパンテオンの石造りの強固で頑丈な建物に比べて、内と外の環境を区別せず、環境に調和するような柔軟でしなやかな造りになっている。この見方はデジタルインフラを構築するうえで強みになるはずだ。
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──20、30年でこの壮大な取り組みを実践するには、意識の変革も必要とのことですが。

リフキン:人間の神経回路には、生物や自然に対して同胞として見る共感力が組み込まれ、無限に拡張することができると科学的に証明されている。生物学者はこれを「生命愛(バイオファリア)の意識」と読んでいる。私たちが本来持っているバイオフォリアの意識を活かせば、私たちの種を越えた生物全体、そして、地球全体を「生命の源」として捉え、自然を人類に適応させるのでなく、人類を自然に適応させる意識と行動の大逆転が可能になる。私は、そこに希望を見出している。


ジェレミー・リフキン◎経済社会理論家。世界各国の首脳・政治交換のアドバイザーを歴任。経済・社会・科学技術を分析し、未来構想を提示する。『限界費用ゼロ社会』、『エイジ・オブ・アクセス』、『第三次産業革命』などが世界的にベストセラーに。

文=中沢弘子

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