Forbes JAPAN2月号は、「『地球の希望』総予測」特集。戦争、気候変動、インフレなど、世界を揺るがすさまざまな事象が起きる「危機と混迷の時代」。2024年の世界と日本の経済はどうなるのか? 世界で活躍する96賢人に「今話したいキーワード」と未来の希望について聞いた。
──著書では「地球が再野生化している」と書かれ、私たちは環境面で奈落の際にじりじりと近づきつつあると警鐘を鳴らしています。
ジェレミー・リフキン(以下、リフキン):地球温暖化が最も急速に進んでいる国は22カ国に拡大し、約5億4000万人が北上を余儀なくされた。気温が1°C上昇するごとに、移住者は10億人増え、 4°C上昇すれば、人類の半分が新天地を目指して北上することになるのだ。科学者の気候変動調査によると、私たちは地球上6度目の大量絶滅の危機に瀕している。最後の絶滅の時代は6500万年前だ。私たちは250年前に石炭紀の動物や植物の死骸を掘り起こし、石炭や石油、ガスといった化石燃料を基盤に工業文明を築き上げた。「進歩の時代」になり、これまでになかった豊かさを享受してきた。だが、この250年の豊かさの代償が、今地球をのみ込もうとしている自然の猛威だ。これまで頼ってきた策は通用しない。私たちは、世界観、経済の理解、統治の形態、時間・空間の概念、人間の最も基本的な欲求、地球との関係のすべてを考え直すしか生存の道はない。
──国連が2023年11月、各国が2030年までに温室効果ガスの削減目標を達成したとしても世界の平均気温は今世紀末までに2.9度上昇するという見通しを発表し、対策は不十分だとしています。私たちが最優先すべき有効な対策とは何でしょうか。
リフキン:気候変動という史上最大の危機に対して、いかにレジリエンスを基盤とした社会を構築するのかが問われている。そのキーとなるのが、デジタル・インフラストラクチャーだ。通信、エネルギー、モビリティ・ロジスティクス、水のインフラ全体をつくり直し、アルゴリズムやアナリティクスを駆使してインフラをデジタル化しなければならない。それを50年以内に成し遂げる。
人類史上、大きな文明の転換が起きる時に共通していたのが、通信、エネルギー、モビリティ・ロジスティクス、水の管理方法という4つについての決定的なテクノロジーが出現したことだ。4つの要素によって、パラダイムシフトとインフラシフトが起き、経済の統治方法が転換し、社会が根本から変革される。