経済・社会

2024.02.19 13:30

2050年の世界・大予測の著者、「日本の強みを過小評価するな」

アメリカは世界のリーダーであり続ける

──日本にとって、アメリカと中国の関係は非常に重要です。本のなかで、この2大国は協調の方向に進むと書いていますが、今もそのように考えていますか。

マクレイ:私は中国とアメリカの関係について、1年半前よりもポジティブに考えている。現在の世界経済の混乱や経済面での米中間の緊張を考えると、奇妙に思えるかもしれない。しかし、いくつかの変化があった。ひとつは、中国の人口が予想よりも早く減少していること。高齢化のスピードは速くなっている。中国にとってマイナスだと言えるが、それが私の期待しているような変化を中国にもたらすかもしれない。つまり、中国が外側に目を向けるのをやめ、内側に目を向けて高齢者により良い生活を提供しようとするかもしれないということだ。そこから、アメリカとの関係も変化するのではないか。

──アメリカは今後も世界のリーダーで居続けるのでしょうか。大国はいつか衰退するものですが、アメリカが他国に追い抜かれる兆候はありませんか。

マクレイ:アメリカの現在の政治が非常に困難であることは認めるが、5年後も政治がこれほど困難になっているとは考えにくい。さらに、優秀な人材を引きつけるアメリカの魅力が弱まったという兆候はまったく見られない。2、3年前と比べて、中国人留学生の数が減っているが、インド人は多い。優秀なソフトウェア・エンジニアなら、第一志望はアメリカだ。AIの発展もアメリカがリードしている。アメリカを目指す移民は、次世代の優れたアイデアを提供してくれる。移民によって設立されたテクノロジー企業のリーダーたちの多くがそうだ。

今世紀末も、世界最大の経済大国はアメリカだろう。中国が数年のうちに経済規模で米国を追い越すことはあるかもしれないが、今はその可能性はますます低くなっている。大国が必然的に追い抜かれるというのは非常に長い目で見た場合の話で、アメリカ人が考えているよりもはるかに長い間、アメリカは大国であり続けると思う。

──アメリカは世界1位の国であり続ける一方で、中国やインドの台頭で、30年後、相対的にアジアの力が強くなります。それは、欧米にどのような影響をもたらすでしょうか。

マクレイ:一歩引いて考えてみることが重要だ。第二次世界大戦直後は、アメリカが事実上世界を支配し、ロシアだけが弱いライバルとして、いた。ウクライナ侵攻はロシアをさらに弱体化させるだろう。アメリカは私が生まれたころから世界最大の軍事大国で、文化的な支配者であり続けたが、相対的な意味での支配力はインドと中国の台頭によって少し弱まるだろう。そして今世紀末には、アフリカのいくつかの国も中国やインドのようになるかもしれない。

しかし、西側諸国のなかでは、アメリカの支配力は弱まるどころか、より強くなる。ヨーロッパは落ち着きを取り戻し、より居心地がよくなるだろうが、経済面でも世界的な影響力でもアメリカと肩を並べることはない。ヨーロッパの中産階級やアメリカの中産階級の考え方に対して、インドの中産階級や中国の中産階級の考え方がより重要になる。つまり、よりバランスの取れたものになる。しかし、結局のところ、大きな力をもつのはアングロ圏だと言える。
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インタビュー=塩野 誠

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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