経済・社会

2024.02.19 13:30

2050年の世界・大予測の著者、「日本の強みを過小評価するな」

ヘイミシュ・マクレイ(イラストレーション=べルンド・シーフェルデッカー)

サービス業の生産性向上で世界が一変

──本を執筆されてから1年半がたちました。この間に、自分の未来予測の範囲外で起きた出来事はなかったのでしょうか。
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マクレイ:2022年の秋にChatGPTが発売されるまでは生成AIへの関心はそれほど高くなかったが、生成AIは、サービス産業が製造業と同じレベルの生産性向上を達成させる技術で、世界経済を一変させる素晴らしい可能性を秘めている。

世界経済の成長には構造的な問題がある。製造業の生産性を年率2〜3%向上させることは容易だが、製造業の規模は世界経済の10%か15%程度で、社会全体の富を増やすには小さすぎる。しかも生産性をあげれば上げるほど、雇用の面でも小さくなってしまう。世界をより豊かにするのに必要なのは、サービス産業の生産性を高める方法を見つけることだが、非常に困難だった。しかし突然、それを可能にするテクノロジーが登場した。すでに人々の生産性を飛躍的に向上させる事例が生まれている。

──本が出版されて反響はいかがですか? 日本では若い世代に支持されていると聞きます。

マクレイ:全体的にポジティブな印象だ。私は2050年まで生きていないが、世界の若者を応援したい。私は未来への旅にみんなを案内しているツアーガイドのようなものだ。大事なのは、みんなが一緒に進んでいるということ。そのなかには、私よりいくつかの事柄についてもっと詳しい人がいて、誤りを指摘してくれるだろう。私がある山を指さして、これは1870年に初めて登られたんだと言うと、その場にいた誰かが「いや、それは違うよ。その登山は成功していない。本当は1880年のことで、その人の名前はこうだった」と言う人がいるかもしれない。
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それは、素晴らしいことだ。私より詳しいのなら、私がしてきたことを使って、あなたの人生やあなたが知っている時代を私以上に予測してほしい。私が考える方法は、今ある世界を見て、「人口動態」「資源と環境」「貿易と金融」「テクノロジー」「政府と統治」の5つの構成要素をもって、それらについて判断を下すことだ。そして、その判断のいくつかは間違っているだろう。それでいいし、間違っていることはわかっている。でも、それをベースにして間違っていたら変えて、世界に当てはめていくことを繰り返す。

私が与えられるのは、この未来について考えるための枠組みだ。この枠組みは、私が導き出した未来予測の結論以上に重要だと思う。
(イラストレーション=ファブリツィオ・レンツィ)

(イラストレーション=ファブリツィオ・レンツィ)

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インタビュー=塩野 誠

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