経営・戦略

2024.01.16 11:00

スタートアップが「方向転換」を図るとき、留意すべき3つのポイント

ピボット戦略を立てる

事業の方向転換を決断したら、次は、困難を乗り越えていくための戦略を立てる段階だ。「この戦略に欠かせないのは、経営トップや投資家、利害関係者に対して、新たな方向性を明確に示すことだ。説得力があり、実現可能で、市場の需要に対してより合致したビジョンを示すべきだ。単なる思い付きではなく、データと実証された学習成果をもとに決断を下さなくてはならない」とアリントンは話す。

事業計画が変更になっても、企業には、転換中もその完了後も、一貫して損なわれるべきではない要素がある。「方向転換する時にも、コアバリューとチームの強みは維持しよう。それらはよりどころとして、転換期を通してアイデンティティと文化を守る支えとなってくれる」とアリントンは言う。

「新たな方向性を見定めたら、迅速に実験に取り組み、うまくいくかどうかを確認しよう。顧客に対して価値を提供できる最小限の製品(MVP:minimum viable products)で、新たに仮定を立ててそれをテストし、リソースを過度に費やさずに、市場ニーズを確認しよう」

テストを行えば、計画している方向転換の何がうまくいき、何がうまくいかないかを見極められるはずだ。「見極めのために、新たに自社の目指す方向転換に見合った重要業績評価指標(KPI)を定めるのもひとつの手だ。KPIなどの尺度は、新戦略の成功を反映し、意思決定を導くものでなくてはならない」

「ピボットとは、一度限りのイベントではなく、プロセスであることを忘れないでほしい。テストの終了後も、継続的なフィードバックや市場の変化に応じて繰り返していく準備をしておこう。スタートアップの世界でカギとなるのは、柔軟性と適応力だ。それが特に求められるのが、ピボット中とピボット後なのだ」とアリントンはアドバイスする。

リソース、社風、オペレーションを管理する

ピボットではしばしば、リソースの再配分が必要になる。従って、ピボットに乗り出す前に、現在の資産、スタッフ、財務状況を再点検しよう。

「事業の方向転換には精神的負担が伴うことがあるが、多くの創業者はその点の考慮を怠っている。予算の再配分、役割の変更、場合によっては規模縮小など、難しい決断を下さなくてはならないことを覚悟しよう」とアリントンは言う。「社内チームや利害関係者との率直かつ透明なコミュニケーションを維持することが不可欠だ。関係者全員が、ピボットの必要性を認識し、戦略の新しい方向性を理解すべきだ。このように透明性を維持することで、信頼と団結が生まれる」

そして最後に、残っているチームメンバーを支えるために、すべてを明確にし、トレーニングを行い、精神的なサポートを提供しよう。「成功を収めたスタートアップには必ず、信頼できるチームが存在している。チームの努力を認め、転換期に成果を上げたら、それが小さなものでもそれを祝って士気を保ち、失敗しても回復できる力(レジリエンス)をもった社風を育むべく取り組んでいくことだ。そうすればピボットを、挫折ではなくむしろ成長の機会だ、と捉えるマインドセットを育むことができる」

スタートアップがピボットを成功させるためには、戦略の立案、敏捷な運営、チームのレジリエンス、強力なリーダーシップをうまく融合させることが必要だ。首尾よくビジネスを方向転換できれば、それが転機となって、業績不振のスタートアップが、勢いのあるビジネスへと生まれ変わる可能性がある。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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