バイトダンスの「本当の狙い」
2016年にByteDance AI Labを設立したバイトダンスが、TikTokなどのSNSとは一見あまり関係のない業界に進出したのは今回が初めてではない。バイトダンスは2022年に、中国最大級の民間病院のAmcare Healthcare(美中宜和病院)を15億ドル(約2200億円)で買収したが、これは同社が2020年にオンライン医療百科事典Baikemyを買収し、その後Xiaoheの名前でヘルスケアアプリ群を立ち上げた後、この分野での足掛かりを確立するための後押しだった。専門家は、その当時のフォーブスの取材に、これらの動きが中国政府が近い将来、中国をヘルスケア分野のグローバルリーダーにするよう命じていることを反映したものだと語った。
しかし、当時との違いは、バイトダンスがこうした取り組みを中国だけでなく米国にも拡大し、米国の主要都市で科学者や専門家を雇用しようとしていることだ。同社は、この取り組みを通じ、米国の他のテック業界の大手に対抗することになる。
グーグルの親会社であるアルファベットは、ムーンショット・ファクトリー(旧グーグルX)を通じて技術や科学のブレークスルーを追求している。グーグルのDeepMindも最近、人間の推論を模倣できるモデルを発表した。フェイスブックやインスタグラムの親会社の研究拠点であるメタAIも、AIでMRIへのアクセスを改善・拡大し、医師がX線を読み取って予測を立てるのを支援することで、医療に変革をもたらそうとしている。
また、アマゾンは2022年に初期診療(プライマリーケア)を手がける米国のスタートアップOneMedicalを買収し、ヘルスケアに参入している。
ヴァンダービルト大学のシュミット教授は「バイトダンスが、この分野の優れた人材にアクセスする方法を見つけようとしていることは確かだ」と語った。
しかし、その一方でシュミット教授は、バイトダンスの科学分野への進出は、TikTokが米国で厳しい監視の目にさらされる中で「彼らが米国での好感度を上げるための手段である可能性もある」と付け加えた。
「TikTokは、米国の若者に与える影響について、多くのネガティブな評判を集めているが、バイトダンスは、政府や規制当局からより肯定的に見られる分野に事業を多様化しようとしているのかもしれない」と彼は語った。
バイドダンス自身は、次のように述べている。「私たちのゴールは、新たな方法論で自然科学のブレークスルーを生み出し世界を救うことです」と。
(forbes.com 原文)