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2022.08.30

TikTokだけじゃない中国バイトダンスの恐るべき事業拡大の野望

Photo by Emmanuel Wong/Getty Images

中国のバイトダンスは先日、中国最大級の民間病院のAmcare Healthcare(美中宜和病院)を15億ドル(約2060億円)で買収したと報じられた。「TikTok」の親会社として有名な同社の野望は、大人気の動画アプリをはるかに超えて広がっている。

バイトダンスのウェブサイトには、TikTokとその中国語版のDouyinを含む、わずか7つのプロダクトしか掲載されていない。しかし、同社はビデオゲームのスタートアップや医療サイト、決済処理業者などを買収し、一時は教育や不動産事業も手掛けていた。調査会社Sensor Towerによると、バイトダンスは70個のアクティブなアプリを傘下に持っている。

一部の専門家は、中国政府がバイトダンスに出資していることや、中国政府が企業にデータの引き渡しを義務付ける法律を制定していることから、バイトダンスの事業拡大が懸念材料になると述べている。米国政府の元防諜責任者ウィリアム・エバニナは、フォーブスの取材に「バイトダンスはデータ収集の母艦だ」と述べた。

バイトダンスと同様にアマゾンも、OneMedicalの買収によってヘルスケア分野に進出する。「しかし、この2社の大きな違いは、バイトダンスの場合、彼らは中国共産党にすべてのデータを提供しなければならないことだ」とエニバナは話した。

バイトダンスの企業価値は現在、ハイテク市場全体の下落に伴い3000億ドル以下に下落しているが、創業から10年の同社は巨大テック企業のアリババやテンセントをライバルに見据えるほどに急成長した。この記事では、2012年にアパートの一室で誕生した同社がどのように成長してきたかを紹介する。

ニュース配信事業


バイトダンスは、動画アプリTikTokで知られるようになる何年も前に、ニュースサービスの「Toutiao(今日頭条)」を立ち上げていた。Toutiaoは2017年までに中国で約7億人のユーザーを集め、同社はその国際版として「TopBuzz」を展開した。

このアプリは、2018年までに4000万人以上の米国ユーザーを開拓したが、2020年に閉鎖された。バイトダンスは、TopBuzzを通じて米国のユーザーに親中派のメッセージを広め、中国政府に批判的なコンテンツを検閲していたと元従業員は述べている。

同社は2017年にフランスのニュースアプリ「News Republic」も買収したが、このアプリも中国政府に批判的なコンテンツを検閲していることへの懸念から閉鎖された。2018年に買収したインドネシアのニュースアプリ「Baca Berita」(BaBe)は現在も配信されている。

企業向けソフトウェア


バイトダンスは2019年に同社初のエンタープライズ製品の「Lark」(中国では飛書と呼ばれている)を発表した。このオフィスコラボレーションツールは、グーグルやマイクロソフトの製品のバイトダンス版という位置づけだ。

バイトダンスとTikTokの社員は、日常業務のすべてをLarkで行っている。これとは別に、同社は2021年、TikTokやDouyin向けに開発したレコメンドアルゴリズムを企業向けのプロダクトにした「BytePlus」を立ち上げ、米国やシンガポール、インドネシア、インドの顧客に提供している。
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編集=上田裕資

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