中国バイドゥがライブ配信大手の買収を中止、当局の承認得られず

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中国の検索エンジン大手バイドゥ(百度)は、規制当局がオンラインコンテンツに対する締め付けを強化する中で、3年前から進めていたライブ配信大手JOYY(歓聚集団)の中国向けライブストリーミング事業「YY LIVE」を36億ドル(約5160億円)で買収する計画を中止した。

バイドゥは1月1日の香港証券取引所への提出書類で、関連会社のMoon SPVがJOYYの事業の買収を中止したと発表し、その理由として、当局からの承認が買収の期日である12月31日までに得られなかったことを挙げた。

ナスダックに上場するJOYYは、これを受け「法的助言を求め、あらゆる選択肢を検討する」と発表している。JOYYによると、両社の株式の売買契約は2021年2月に実質的に完了していたという。

2020年11月に締結されたバイドゥによるYY LIVE の買収契約は当初、2021年前半に完了する予定だった。バイドゥの共同創業者でCEOのロビン・リーはその当時、人気のライブストリーミングアプリを買収することが、同社をこの分野の主要プラットフォームに押し上げ、検索エンジンの収益源を多様化させることにつながると述べていた。

バイドゥは、昨年3月に発表した2022年の年次報告書で、この買収に総額19億ドルを支払ったと発表したが「当社の誠実な努力にもかかわらず、買収に必要な規制当局の承認が得られていない」と述べていた。

買収が成立した場合、ライブストリーミング分野でバイドゥは、TikTokやその中国版のDouyin(抖音)を運営するバイトダンスとの激しい競争に直面する見通しだった。また、テンセントが支援するライブストリーミングアプリのKuaishou(快手)も同社のライバルになるはずだった。

それでも、ライブストリーミング分野への進出は、以前から人工知能(AI)への取り組みを強化してきたバイドゥにとって優先事項ではないかもしれない。「中国のグーグル」と呼ばれるバイドゥは、2014年後半から2017年にかけて30億ドルをAI分野に投資し、中国で最も早くAI分野への注力を開始した企業の1社に挙げられる。

バイドゥは昨年3月に、OpenAIのChatGPTを競合に見据えるAIチャットボットのErnie Bot(アーニーボット)を発表していた。

一方、投資家は、中国の規制当局のオンラインエンターテインメントに対する規制を警戒している。12月には当局が、ゲーム企業に対する新たな規制案を発表したことで、テンセントとネットイースの株価は暴落し、合計で800億ドルの時価総額が吹き飛んだ。

中国当局は、過去3年の間、ゲームやライブストリーミングの抑制を目的とした法律を導入し、ハイテク大手を取り締まってきた。2021年11月に、国家新聞出版局(NPPA)は未成年者のビデオゲームの利用を週3時間以内に制限することなどを義務付けると発表した。また、2022年3月に中国の国家発展改革委員会と商務部は「非国家資本」による放送やライブストリーミングを禁止すると発表した。

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forbes.com 原文

編集=上田裕資

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