奇妙なことに、ムーディーズは中国国債の総合的な信用格付けを、2017年以来据え置かれている「A1」のままとした。それでも、これはお墨付きとは言い難い。ムーディーズの最高格付けであるAaaをすでに4ノッチ下回っている。
今回の見通し引き下げは一見大きな動きのように見えるが、中国がすでに困難な状況にあり、事態は良くなるどころかさらに悪化する可能性が高いことを認めたにすぎない。筆者はここ数カ月、記事で中国の金融と経済にのしかかっている大きな問題を挙げて分析してきた。
まずひとつは、中国の不動産開発がほぼ崩壊し、返済できるか疑わしい負債を中国の銀行やその他の金融機関に残したことだ。この巨額の負債に加えて、中国の地方政府が直面している大幅な債務超過もある。債務が膨らんだ主な理由は、中央政府のインフラ整備計画の資金を地方政府が拠出しなければならなかったからだが、その多くはインフラ整備しても十分な経済効果を生み出せなかった。
中国が進めてきた広域経済圏構想「一帯一路(BRI)」の下で、中国から融資を受けた国々が借金を返せなくなったことも、中国の債務問題をさらに深刻なものにしている。同時に、中国の輸出減や全般的な景気減速により、損失の補てんはこれまで以上に難しくなっている。
ムーディーズの格下げは妥当なものだが、予想通り中国政府は反発した。ただし、例外的に強い反発ではなかった。財政部は「失望」を表明し、中国経済は「すぐに立ち直れる」と主張。同部の広報担当者は、政府はすでに地方政府の債務問題に対処するための措置を講じており、経済成長を促すための追加の措置も取っていると指摘した。ただし、それぞれの取り組みについて具体的な説明はなかった。
財政部はまた、中国(中央政府)の債務残高は国内総生産(GDP)比で米国や日本より軽いと指摘することで、財政の強さを示唆した。中国が言う自国の債務は対GDP比77%であるのに対し、米国は123%、日本は264%だ。これらの数字について議論の余地はないが、ムーディーズなどの率直な分析の前に、財政部の指摘は問題をはぐらかしている。