新たな政策は、国内の不動産開発会社が未完の住宅建設工事を完了させるための総額3兆2000億元(約65兆円)という巨額の資金不足が、中国の金融システムと経済に与えている負担を軽減するのが狙いだ。以前の中国政府の対処が暫定的なものであったのに比べると、今回の取り組みは説得力があるように見える。だが、必要を満たすには足りないだろう。
中国からの信頼できる報道によると、この最新の取り組みには基本要素が3点あるという。まず1点目として、中国政府は国内の銀行に不動産開発会社への融資を拡充するよう促していることが挙げられる。中国では大半の銀行が国有であるため、間違いなく政府の意向に応えるだろう。
この融資拡充は、2020年から21年にかけて中国政府が取った、不動産開発会社への融資を抑制するという措置と真逆のものだ。だが、その融資抑制策自体が、融資を受けやすくして不動産開発を促進させるという、それまで長く続いていた政策からの急激な転換だった。この3年前の突然の政策転換こそが不動産危機のそもそもの原因だ。今、中国の指導部は一周して元に戻った(政府が主導する経済の知恵と安定とはこの程度のものだ)。
中国政府による取り組みの第2の要素は、銀行が不動産開発会社に無担保の短期融資を行うことを許可するというものだ。これまで開発融資は常に、完成するかどうかわからない不動産を担保としていた。政府は、無担保融資を利用できるようにすることで、経営難に陥っている不動産開発会社が過去の融資を返済できるようになることを期待している。このような過去の融資は、返済のための資金調達方法がないことで不動産危機の核心となっている。
第3の要素は、どの不動産開発会社がこの融資を受けられるかを、指導部が選択できるようにすること。政府は対象となる不動産開発50社の、いわゆる「ホワイトリスト」を銀行に提供する。ここで、避けられない政界のコネが政策の方程式に入ってくる。完全なリストはまだ明らかにされていないが、不動産開発最大手の碧桂園(カントリーガーデン)や国営の万科企業(チャイナバンケ)が含まれているようだ。
この新政策で最も建設的な部分は、新たな融資の流れによって、不動産危機に陥る前に住宅購入者が前払いしていた推定2000万戸のマンションを、不動産開発会社が完成させられるようになることだ。購入者がこれらのマンションを手に入れることができれば、中国はかなりの社会不安から解放されることになる。マンションの完成で、国内の銀行や金融システム全体の負担もかなり軽減されるはずだ。購入者らは前払いのために住宅ローンを組んだが、当然のことながら、マンションが実際に完成するまで支払いを拒否してきた。おそらく、こうした購入者らはひとたびマンションを入手すれば、住宅ローンの返済を開始し、現在膨大な不良債権のようになっている融資を銀行は回収できるだろう。