アジア

2023.12.20 10:00

中国の不動産危機対策が「失敗しそうな理由」

日下部博一
このような歓迎すべき効果を除けば、中国政府の行動は金融問題を先送りするだけだ。新たな融資を受けた不動産開発会社は、販売済みのマンションを完成させるかもしれないが、それ以外に新規事業のキャッシュフローはほとんど見込めない。販売済みの住戸は前払いであるため、その代金はとっくに入金されている。

また、現在の中国経済には、不動産開発会社が昔の債務や政府の新たな政策の下で抱える債務を返済するのに十分な収益を得られるような、さらなる発展はとんど見込めない。その結果、中国の銀行はこれらの融資で巨額の損失を被る可能性を抱え続けることになる。

中国政府の政策は、銀行が昔から取ってきた苦肉の策のバリエーションに過ぎないようだ。その策とは、貸し倒れに直面した貸し手が、破綻しそうな借り手が将来どうにか借金を返済するための資金を確保してくれるだろうと、むなしい望みを抱いて返済期限を延長するという、「先延ばしにして取り繕う」というものだ。

中国政府は、過去の債務を返済するために新たに融資するという手段をさらに超える方法で、依然として存在する資金不足問題を解決しなければならない。より本質的な対策を講じなければ、不動産開発会社が将来、「まだ借金を返せない」と発表した際に金融危機が再燃するだろう。中国の銀行は不良債権の問題がまだ解消しないことを認識しているため、政府が最近決定したインフラ支出の増加のような、より有望そうな他のプロジェクトへの融資は制限され続けると思われる。

この悪化する厄介な危機に対処するために、中国政府が以前よりも大胆な措置を講じたことは評価に値する。この点で、今回の動きは称賛すべきかもしれないが、それでも中国が必要とするものを満たすことはできないだろう。

中国の金融も経済も、重大な危機から脱したわけではない。結果として、中国の指導部も同じことだ。解決には政府がより大胆な措置をさらに取る必要がある。中国にとって悲しいことに、指導部がこの困難に立ち向かっているとは思えない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事