アジア

2023.12.05 09:00

「金」頼みの中国の影響力が限界に、打開策は見つからず

安井克至

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世界的に影響力を持つという中国の野望はある種の壁にぶつかっている。問題は資金不足だ。

迷惑で危険な軍事的行動はさておき、中国の影響力の追求は常に金に頼っている。つまり、中国が自由に海外投資できる金をいくら持っているか、中国が他国からどれだけ買っているかに支えられている。しばらくの間、中国は資金を無限に持っているように見えた。だが、もはやそうではない。中国の原動力は厳しい制約に直面し始めており、こうした制約は今後一層厳しいものになる可能性が高いようだ。

問題の発端は中東だ。中国はサウジアラビアとイランの国交再開の仲介役を果たし、これまでで最大の外交的成功を収めた。この偉業は世界各国を驚かせ、中国は大きな益を得た。これを達成するために中国は、石油輸出国である両国のいずれとも敵対していないという立場を利用したと西側の一部の国は主張できるかもしれない。だが中国は主に、サウジアラビアとイランの石油を最も多く買っているという立場を利用した。

中国にはもはや、外交上の勝利を可能にした購買力はない。ロシアを公然と支持することで、中国はロシアが西側諸国に売ることができなくなった石油などを引き受けざるを得なくなった。今年第3四半期までに中国が購入したロシア産原油は、前年同期比で42%増加した。だが中国は、特に経済が減速しているため、輸入した大量の原油を使うことしかできない。

ロシア産を購入するために、中国は中東からの輸入を減らしている。米エネルギー情報局によると、サウジアラビアとクウェートからの中国の購入量はほとんど増えていない。米紙ウォールストリート・ジャーナルの情報源によると、サウジアラビアからの石油の輸入は11%強減ったという。中国がイランからの輸入を高水準に維持しているのは、間違いなく影響力を維持するためだが、米国の制裁によりイランが値引きをせざるを得なくなったためでもあるようだ。
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翻訳=溝口慈子

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