アジア

2023.12.08

香港の不動産市場が停滞、入札参加者ゼロの場合も

Getty Images

香港の不動産市場は長らく大きな富を生んできた。香港の億万長者ランキングで上位を占めるのは、不動産開発を手がける人々だ。彼らは、地価をうまく扱って利ザヤを拡大できる広い開発用地を入手することで富を築いてきた。

ところが近ごろ、そうした開発業者と、借地権の最大の売り手である香港政府とのあいだで、土地評価額を巡る衝突が起きている。それが膠着状態を招き、香港経済の勢いを削ぐ結果となっている。

不動産市場の頂点にいるのは、すべての土地を所有する香港政府だ。過去には、歳入の50%以上を、借地権の入札に頼っていたこともある。その香港政府が現在、2023年の販売分である18区画の入札者探しに苦労している。

香港鉄路(MTR)は、広範な鉄道網の運営企業であると同時に、不動産開発大手でもあり、空港近くで土地開発プロジェクトを進行中だ。しかし入札者はゼロと、10年ぶりの事態となった。

これまでの入札案件をみると、かなり割安となっている。金融サービス企業MSCIで、アジア地域の資産取得状況を追跡するアジア有形資産リサーチ部門を率いるベンジャミン・チョウは、「活気のない現在の状況は、香港の投資市場が4~5年前の最盛期と比べてどれだけ落ち込んでいるかを示す、残念なしるしだ」と話す。

「入札が不調なのは、買い手と売り手のあいだで、価格に対する期待の隔たりが広がっていることも示している。その悪影響は、オフィスや小売といった従来の商業セクターだけでなく、土地の売却市場にも及んでいる」

MSCIによると、政府と民間企業双方による借地権販売は、2009年以来の最低レベルに落ち込んでいる。チョウによると、政府案件におけるその原因は、開発業者の意欲低下だけではない。評価額を下回る入札価格では借地権を売らない、という政府の判断にも問題があるという。

政府が2023年にかろうじて売却した2区画のうちの1つは、九龍の啓徳エリアにあり、MTRの駅が近い。9月時点の価格は、1平方フィート当たり5392香港ドル(約10万円)だった。この付近で4年前に取引された区画が1平方フィート当たり1万7600香港ドル(約33万円)だったので、そこから3分の1以下に下がったことになる。同エリアでは、2014年以来の価格だ。

もう1カ所は、香港島ケネディタウンの一等地で、2023年7月に1平方フィート当たり7071香港ドル(約13万円)で取引された。業界コンサルタントJLLのデータによると、同地域の不動産として、この価格は2002年以来の最低水準だ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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