信用格付けは、国の債務返済の能力を評価することで、その国の経済の健全性を示す。投資家の投資の判断材料となる。
米議会は6月に連邦債務の上限を一時停止することに合意。フィッチ・レビューによると、これは「過去20年間にわたるガバナンス基準の着実な悪化」を示しており「財政管理に対する信頼を損なった」という。
フィッチはまた、社会保障と公的医療制度メディケアの費用に関する取り組みが限定的な進展にとどまったことも引き下げにつながったとしている。
フィッチは、今年末から2024年にかけて米経済が後退すると予想しており、これも引き下げの一因となった。米国の実質GDP(国内総生産)の年成長率は鈍化し、求人が新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)前の水準を上回るとみている。
連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めの継続、10年以内の社会保障年金の積立金の枯渇、財政赤字の拡大予想、将来の経済ショックに対する財政の脆弱性の増大などを引き下げの理由として挙げた。
ジャネット・イエレン財務長官は声明で、フィッチの決定は「恣意的で、古いデータに基づいている」などと反論。また、フィッチの判断に使われた指標の多くは「バイデン政権で改善してきた」と述べ、債務上限をめぐる超党派の法案やインフラへの投資を指摘した。「米経済は基本的に強い」とも主張した。
フィッチは5月に、債務上限をめぐる政治的な「駆け引き」が続く中で、米国の格付けが引き下げられる可能性があると警告していた。
フィッチと他の格付け会社2社(ムーディーズとS&P)の格付けは投資家の判断に大きな影響を及ぼす。ムーディーズは依然として米国に最上位の格付けを与えているが、S&Pは2011年に引き下げを行い、フィッチと同じ「AA+」としている。
今回のフィッチの引き下げにより、米政府の借入コストが今後膨らみ、広範囲にわたる金融混乱につながる可能性がある。
(forbes.com 原文)