高卒でビリオネアになった中国EV「理想汽車」の42歳創業者

第20回上海国際自動車産業展示会での調印式に出席したリー・シャン(中央左、Photo by VCG/VCG via Getty Images)

中国の電気自動車(EV)メーカー「理想汽車(Li Auto)」の創業者のリー・シャン(李祥)は、家族向けのハイブリッドSUVシリーズで、競争の激しい中国のEV市場のニッチなカテゴリを切り開いた。このシリーズのヒットによって、ナスダックに上場する同社の株価はここ1年で2倍以上に上昇した。

フォーブスが11月8日に発表した中国の富豪ランキングで、現在42歳のリーは2年ぶりにランキングに返り咲き、34位に入った。彼の保有資産は、74億ドル(約1兆1200億円)とされている。

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理想汽車は、自社の車両をテスラのピュアEVと差別化するため、EREV(エクステンデッド・レンジEV)と呼ばれるシステムを採用している。このシステムは、バッテリーと内燃エンジンの双方から電力を供給するもので、バッテリーのみを使用した場合は1回の充電で175km、エンジンで追加の発電を行うモードでは最大1100kmの走行が可能だ。

同社の家族旅行向けに車内スペースを拡大したラインナップには、小型冷蔵庫を備えた豪華版6人乗りのフラッグシップSUVの「Li L9」と、通常版の6人乗りの「Li L8」、5人乗りの「Li L7」があり、価格は4万3000ドルから6万3000ドルだ。

上海を拠点とするコンサルタント会社オートモーティブ・フォーサイトのエール・チャンは「理想汽車は、中国の消費者の好みを的確に捉え、自社製品を市場で明確にポジショニングしている」と述べている。

中国乗用車協会によると、理想汽車は9月に前年同月比3倍増の3万6000台以上を販売し、新エネルギー車の販売台数で国内のトップクラスに入った。第2四半期の売上高は39億ドルと前年同期の3倍以上に増加し、純利益は3億1900万ドルと、前年同期の9570万ドルの赤字から黒字に転換した。

国営ニュースの中国証券報は、理想汽車が2025年までに年間160万台の販売台数を目指していると報じた。

1981年生まれの高卒起業家

高卒の連続起業家として知られるリーは1981年生まれで、まだ高校生だった1999年に自身のウェブサイトを立ち上げ、大学には進学せずに、2000年にIT、デジタル、家電製品の情報サイトの泡泡网(PCPOP.com)を設立したと、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは報じている。彼は、2005年に自動車関連のニュースとサービスのプラットフォーム汽車之家(Autohome)を設立し、2013年にニューヨーク証券取引所に上場させた。

その2年後の2015年に理想汽車を立ち上げたリーは、フードデリバリーの美団(Meituan)や、バイトダンスなどから出資を獲得し、2020年にナスダックに上場。2021年には香港市場にも上場した。

ピュアEVへの転換を加速

理想汽車は現在、新たな挑戦に向かっている。テクノロジーの進歩や充電設備の整備によって航続距離への不安が解消された今、理想汽車は、ピュアEVにシフトするために、次期モデルではガソリンエンジンを廃止する計画だ。次期モデルのLi Mega MPVは、7万ドルを超える価格帯の高級車セグメントをターゲットとし、年内の発売を予定している。

理想汽車はまた、今後2年間で全国に3000カ所の充電ステーションを建設する計画だ。

中国のピュアEV市場の競争は、激化しており「割り込むのはもっと難しい」と、上海を拠点とする調査会社86Researchのアナリストは述べている。しかし、理想汽車は可能な限り早くピュアEVへの移行を完了させようとしている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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