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2023.09.01

元メタ研究者の「AI創薬」企業、評価額2億ドルでシード資金調達

Getty Images

生物学のための人工知能(AI)言語モデルを開発した元メタ社の研究者らが、新たなスタートアップを立ち上げ、少なくとも4000万ドルを調達したことが判明した。

フォーブスが入手したプレゼン資料によると、元メタのアレクサンダー・ライヴス(Alexander Rives)が率いる8人のチームは、EvolutionaryScale(エボリューショナリー・スケール)と呼ばれる企業を立ち上げ、AIモデルの規模を劇的に拡大するための資金調達に動いていた。その結果、Lux Capitalの主導で評価額2億ドルで、約4000万ドル(約58億円)を調達したと、この取引に詳しい4人の関係者は述べている。

同社の8人の創設スタッフは全員、メタが今年4月に閉鎖したタンパク質フォールディング (Protein folding)部門の出身という。彼らは、そこで未知のタンパク質の構造を予測するためのGPT-4やBardに類似したトランスフォーマーに基づく言語モデルを生み出し、治療薬や汚染を浄化するための微生物を開発する上で役立つデータベースを作成したという。

グーグル傘下のDeepMind(ディープマインド)は2020年、タンパク質の構造を予測するAIシステムAlphaFold(アルファフォールド)をオープンソースで公開し、この分野で最大の注目を集めた。ノーベル賞受賞者のヴェンキ・ラマクリシュナン(Venki Ramakrishnan)は、2020年のブログ記事で、ディープマインドの研究を「生物学研究を根本的に変える驚くべき進歩」と称賛していた。

昨年11月にライヴス率いる研究チームは、学術誌『サイエンス』で発表した論文の中で、彼らのAIモデルがアルファフォールドよりも60倍速く予測を行うことができる述べていた。しかし、現状のAIはまだ、医薬品開発の効率化において、漸進的な改善効果を与えるにとどまっているのが現実だ。生成AIのブレークスルーは、生物学分野ではまだ起こっていない。

ChatGPTの登場により、生成AIの商業化を目指す動きが本格化するなか、ライヴスのチームはメタを去った。メタは、幅広い研究を追求するためにAI部門を設立したが、特定のプロジェクトが商業的な可能性を示すにつれて、その焦点を絞り込んできた。OpenAIも、同様に、2021年にロボット工学チームを解散していた。

メタのタンパク質チームの解散を最初に報じた英フィナンシャル・タイムズ紙は、この動きが広範なレイオフの一環であり、一連のAIチャットボットのような商業的取り組みに集中するための戦略転換だと説明していた。生物学のためのAIは、短期的に収益化が見込めるほとには発展していない。
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編集=上田裕資

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