中学校の頃に、自閉症スペクトラム症を省略して、スペという言葉が流行った時期がありました。テストですごい低い点をとった人や変わった言動をする人に、「お前スペじゃん」といった具合に。要は、障害者というのが、揶揄する言葉として機能していた。
スペという言葉の意味も、ヘラルボニーが20年、30年先に成長した時に、褒め言葉に変わる。そのような社会をデザインしていきたいと思っています。
岩田:現在社員は60名とのことですが、ダイバーシティインクルージョン(以下D&I)や働きやすさで気を使っていることはありますか?
松田:ヘラルボニーには耳が聞こえないメンバーがいます。そのメンバーは、自分の人生において、健常者の人と接する時には自分の心に蓋をし続けていた。 手話と日本語という言語の壁があるからです。それでも、ヘラルボニーに参加してからいつもたくさんの発言をしてくれるんです。
彼女(ろう者のメンバー)と出会って、無意識的に差別してしまっている状態って実はすごい多くあるなと気付きました。会話の自動文字起こしツールを導入しましたが、たった1人のためにソースを割くのが会社としてはマイナスだと捉えるのではなく、長期的に見たら、そういったツールの導入自体が、いろんな人たちに気づきを与えることに繋がるんです。
岩田:カームダウンルームも、現状ではないと困る状況ではないけれど、ちゃんと環境を作ることによって、自分が気づいてない誰かに「我々はあなたのことを応援しますよ」というメッセージが伝わるはずだと思っています。
また、自分たちでイベントを主催することによって、 社員が経営者の話を聞くことができる。そうして社会に開くことで、 従業員の価値観のD&Iをより広げることができる。
イベントをすることが四半期の数字に表れるわけではないけれど、長い目で見て100年続く会社の土台になる実感がありますし、社員からも、新しいことをやりたいと声が上がるようになってきて、ようやく伝わってきたかな。
いろんな人たちの個性が強さに変わって、価値に変わっていく社会に向けては、まだ道半ばです。ただ進んだ先に、もっと新しいイノベーションがあることを信じています。
▶︎岩田はスモール・ジャイアンツ イノベーターとして活動中!