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2023.12.25 10:30

デザインが生きる人的資本経営とは ヘラルボニー x アトツギ3人が熱烈トーク

督 あかり
岩田:寄付にも見える投資が、めぐりめぐって資本主義的な価値にも繋がるという考え方は、人的資本経営で重要なんですよね。

四半期決算には影響しないかもしんないけど、さっきの学校と一緒で、中長期的には絶対効いてくると、我々経営者がロジックとして持てるかどうかとか、信じきれるかっていうことですよね。

松田:長谷社長、わざわざ岩手にも来てくれて、作家さんに会って、カーペットも届けてくださったんです。すごいなと思ったのは、こういう時って普通、社長だけが来るパターンってよくあると思いますが、社員の皆さんも連れて岩手までいらっしゃったんです。

社員の皆さんを交通費を出して岩手まで連れて行くって、経営者からしたら「どういうリターンが返ってくる?」って思うようなことです。作家さんに会うということ自体が出会いに繋がっていくという視点を持たれてるところに、経営者としての視座の高さを感じます。

長谷:ひとつポリシーがあって、一緒にもの作りをさせていただいたら、作家さんに必ず、一緒に作り上げた商品をお届けしよう、お返ししようと思っているんです。

僕らは作家さんのデザインがあってこそなので、ただ物を作って販売するだけではなく、作り手として込めた思いを作家さんから聞くことによって、使う人たちにも伝わっていくんじゃないかなと思っています。

デザインを活用した人的資本経営

岩田:デザインをうまく活用して人的資本経営にプラスになる効果をもたらす、といったお話も皆さんとしたいです。

長谷:デザインというと、皆さんが思い浮かべるのは、柄や形じゃないでしょうか。実は私たちからすれば、素材も重要なデザインの要素。

私の友達の子供に、手足が不自由で、真冬になると手足めちゃくちゃ凍えるように寒いという中学生の子がいます。

そこで僕らの作った暖かい素材でできた靴下をプレゼントしたところ、その子が「お母さん、 あったかくて足動くよ」と嬉しそうに言ってくれたそうです。その時に「素材って、人を幸せにする重要なデザインの1つになるんだ」と感じました。

岩田:オフィスに当てはめると、働きやすい・過ごしやすいオフィスは、素材によって作られる部分が大きいと思います。
ヘラルボニーの松田と飛騨産業の岡田

ヘラルボニーの松田と飛騨産業の岡田

岡田:素材の話、すごく共感しました。私から1つ事例を申し上げると、高山市の社会福祉法人の飛騨慈光会で私の父が後援会会長をしていて、継続して支援をさせていただいてるんです。 

ただ寄付して、与える/与えられるという関係ではなくて、継続的に繋がれることができたらいいなと思い、施設の皆さんに賃金を伴う労働をお願いしています。木を磨いて加工していただいたり、陶芸がお好きな方には陶器を作ってもらい納品していただいたり。

その際「この方はこれが得意だから、こういうものを形にして、こういうお客さんに喜んでもらえる商品にしよう」という思考のデザインが、人的資本経営に対してすごく重要になるんじゃないかなと思っています。

私たちが大切にしている4つの価値観があります。1つ目が「人を想う」2つ目が「時を継ぐ」3つ目が「技を磨く」4つ目が「森と歩む」。ものづくりの原点からデザインするという考えが、これらに集約されています。
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文=督あかり

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